(読み)コウ

デジタル大辞泉 「肴」の意味・読み・例文・類語

こう【肴】[漢字項目]

人名用漢字] [音]コウ(カウ)(漢) [訓]さかな
煮炊きした魚肉。副食物。「佳肴酒肴珍肴

な【×肴】

鳥獣の肉や魚介・野菜など、酒・飯に添える副食物の総称。おかず
後妻うはなりが―乞はさばいちさかき実の多けくを」〈・中・歌謡〉

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精選版 日本国語大辞典 「肴」の意味・読み・例文・類語

さか‐な【肴・魚】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「さか」は「さけ(酒)」、「な」は、副食物の総称 )
  2. 酒を飲むときに添えて食べる物。飲酒のときの魚、肉や果実、野菜など。さかなもの。酒のさかな。
    1. [初出の実例]「遠邇(をちこち)の郷里より酒と肴(さかな)とを齎(もちき)て」(出典常陸風土記(717‐724頃)久慈)
    2. 「この酒をひとりたうべんがさうざうしければ、申しつるなり。さかなこそなけれ、人は静まりぬらん、さりぬべき物やあると」(出典:徒然草(1331頃)二一五)
  3. 酒席に興をそえるような行為や事柄。歌や踊り、隠し芸、話題など。酒席の座興。
    1. [初出の実例]「『御酌を御つとめ〈略〉こゆるぎのいそならぬ御さかなの候へかし』と申されしかば、〈略〉今様をうたはせおはします」(出典:とはずがたり(14C前)一)
    2. 「数杯の酒の御さかなと、禿(かぶろ)は扇おっとり、立ち出で」(出典:仮名草子・元の木阿彌(1680)下)
  4. ( 魚 ) うお。魚類の総称。
    1. [初出の実例]「日数をへて、さかなのさがるに、塩をいたす事もなく」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品三〇)
  5. 主食に対して、副食物。おかず。
    1. [初出の実例]「飯に続きて必要なる物は肴なる可し」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉六)

肴の語誌

( 1 )は、もともとイヲ・ウヲが用いられていた。江戸時代以降、次第にサカナがこの意味領域を侵しはじめ、明治時代以降、イヲ・ウヲにとって代わるようになった。
( 2 )方言分布から見ると、魚類の総称としてのウオ系の語は九州南部を主な分布域とし、また西日本各地にも点在している。一方、魚類の総称としてのサカナは全国に広く分布している。従って、江戸(東日本)で発生した魚類の総称としてのサカナが、次第に西日本へと勢力を伸ばし、ウオ系の語を駆逐していったと考えられる。


な【肴】

  1. 〘 名詞 〙 鳥獣の肉、魚介、野菜類など副食物とするものの総称。おかず。
    1. [初出の実例]「前妻(こなみ)が 那(ナ)乞はさば 立柧棱(たちそば)の 実の無けくを 扱(こ)きしひゑね」(出典:古事記(712)中・歌謡)

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普及版 字通 「肴」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 8画

(異体字)
12画

[字音] コウ(カウ)
[字訓] さかな

[説文解字]

[字形] 象形
上の爻(こう)は骨の部分。骨つきの肉。あるいは骨まじりの肉をいう。〔説文〕四下に「啖(く)らふなり」とするが、他書に引いて「雜なり」とするのがよい。〔儀礼、特牲饋食(きし)礼、注〕に「骨にるを肴と曰ふ」とみえる。字はまたに作る。肴を(う)って雑し、柔らかくすることをいう。

[訓義]
1. さかな、骨つきの肉、鳥獣魚肉にわたっていう。
2. 漬けもの、酢漬けの菜などをいう。
3. 国語では、酒にそえるつまみのもの。また、馳走のもの。

[古辞書の訓]
和名抄〕肴 佐加奈(さかな)、一に云ふ、布久之毛乃(ふくしもの)、本令に見えたり 〔名義抄〕肴 サカナ・クダモノ・フクシモノ

[声系]
〔説文〕に肴声としてなど二字を収める。は肴に攴(ぼく)を加える形で、とともに肴の繁文ともみられる字である。

[語系]
肴()heは同声。〔詩、魏風、園有桃〕に「園に桃り 其の實を之れ(さかな)とす」とあって、肴と同義に用いる。

[熟語]
・肴核・肴覈・肴・肴炙・肴酒・肴臑肴脩肴羞肴糅・肴将肴烝肴饌肴膳肴俎・肴・肴・肴味・肴乱肴糧・肴
[下接語]
異肴・佳肴・嘉肴・甘肴・肴・菜肴・雑肴・山肴・残肴・旨肴・酒肴・熟肴・上肴・精肴・薦肴・粗肴・珍肴・盤肴・美肴・豊肴・羊肴

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改訂新版 世界大百科事典 「肴」の意味・わかりやすい解説

肴 (さかな)

古く日本では鳥獣肉,魚貝,蔬菜(そさい)など副食物とする物すべてを〈な〉と呼んだ。〈さかな〉は〈酒のな〉の意で,酒を飲むときに添える食物をいい,これに〈肴〉の字をあてる例は《常陸風土記》あたりから見られる。さかなは酒肴,肴物ともいった。さかなとして供された食物の種類は多岐にわたるが,室町期までは干物(からもの),削物(けずりもの)などと呼ばれた魚貝類の乾燥品が多かった。しかし,1136年(保延2)12月に藤原頼長が催した大饗(だいきよう)のように,蒸しアワビ,キジの乾肉以下の干物8種,コイ,キジ,マス,スズキ,タイを含む生物8種その他といった例もある。やがて,さかなの語は食物だけでなく,酒席に興を添えることをも指すようになる。鎌倉初期あたりには,酒宴がたけなわになると簡単な料理ショーを行うことがあったようで,《古今著聞集》には〈柚をきることは盃酌至極のときの肴物也〉と見える。のちの包丁式はこうしたショーの形を整えたものである。歌舞や隠し芸を行うこともさかなと呼ぶようになり,〈肴舞(さかなまい)〉の語も生まれた。現在でもおせち料理にはめでたい食物としてかちぐり,ごまめ,かずのこ,コンブなどを用い,これを祝肴(いわいざかな)などと称するが,こうした風習は式肴といって,武家時代に重視されたものであった。室町将軍家の料理方であった大草家の伝書には,出陣のときのさかなは〈打って勝って喜ぶ〉と,のし(打ちアワビ),かちぐり,コンブを組み合わせることが書かれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肴」の意味・わかりやすい解説


さかな

酒に添えるものの総称。古くは服飾品や武器などが引出物として酒に添えられた。江戸時代中期以後,宴会料理の発展に伴って食品が主となり,酒との釣合いから一般に魚類をさすようになった。また酒席の座興になる話題や歌舞のこともいう。

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デジタル大辞泉プラス 「肴」の解説

松下育男の詩集。1978年刊行。1979年、第29回H氏賞受賞。

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