胃拡張(読み)イカクチョウ(英語表記)gastric dilatation

デジタル大辞泉 「胃拡張」の意味・読み・例文・類語

い‐かくちょう〔ヰクワクチヤウ〕【胃拡張】

胃が異常に拡張した状態。胃の運動機能の低下、幽門狭窄きょうさくなどで起こり、胃の内容物が停滞する。胃の張る感じ、もたれ、嘔吐おうとなどの症状を伴う。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「胃拡張」の意味・読み・例文・類語

い‐かくちょうヰクヮクチャウ【胃拡張】

  1. 〘 名詞 〙 胃が肥大してそのまま無力化し、広がったままになってしまうこと。嘔吐、胃の膨満感などが現われ、皮膚は乾燥してやせてくる。
    1. [初出の実例]「子供ならざる一人前の大人が、胃拡張を来す程制限もなくものを喰ふとは」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一七)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「胃拡張」の意味・わかりやすい解説

胃拡張 (いかくちょう)
gastric dilatation

胃に拡張が起こることで,胃内容が2~4lに達することもある。胃壁の緊張の消失により急速に胃が拡張し,胃内容を吐出する急性胃拡張と,幽門狭窄があって胃内容が十二指腸へ排出できなくなり2次的に胃が拡張する慢性の胃拡張がある。急性胃拡張症は,手術後や急性感染症,尿毒症,薬物中毒,電解質異常など重い全身疾患が基礎にあって,数時間から数日の間に胃壁の緊張が失われて収縮力がなくなり,胃が著しく拡張した状態である。頑固な嘔吐をくりかえし,脱水症状を呈し急速に全身状態が悪化する。治療としては,胃内容をゾンデを用いて吸引し,輸液による全身状態の維持が必要である。慢性の胃拡張は主として幽門狭窄によるもので,幽門肥厚症十二指腸潰瘍,癌などがおもな原因となる。成人にみられるときは症状は徐々に起こり,何日も前の食物が胃内にたまっているにもかかわらず食事をとることができ,かつ食後数時間以上を経て嘔吐することが多いので,幽門通過障害の発見がおくれることがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃拡張」の意味・わかりやすい解説

胃拡張
いかくちょう

胃の筋層が弛緩(しかん)し、収縮力を失った状態で、胃は無緊張の拡張した袋となる。胃内容の排出が障害され、分泌液、摂取物が貯留し、胃は著しい大きさに達する。病因として、手術ことに開腹手術、麻酔あるいは外傷後にみられる急性胃拡張は、最近の麻酔、輸液の進歩により著しく減少した。内科的には胃の幽門部や十二指腸の消化性潰瘍(かいよう)あるいは癌(がん)などによる器質的幽門狭窄(きょうさく)に続発するもの、また感染症、敗血症、尿毒症、薬物中毒、肝硬変、癌などの慢性全身衰弱のときにみられる。最近は糖尿病に併発する胃症が増加している。

 全消化管疾患の約0.1%にみられる。症状は、頑固な嘔吐(おうと)が持続し、脱水症状、さらに循環障害をきたす。診断は腹部X線検査で、拡張した胃と胃内容の停滞の証明、また幽門狭窄をきたす原疾患が証明されることも多い。治療は、持続的に胃内容を吸引し、同時に輸液と電解質の補給、胃運動亢進(こうしん)剤の注射で、同時に原疾患の治療をする。

[増田久之・荒川弘道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「胃拡張」の意味・わかりやすい解説

胃拡張【いかくちょう】

胃が異常に拡大した状態。一般に食欲低下,嘔気,嘔吐,胃部膨満感などの消化不良性の苦痛を訴える。暴飲暴食によって起こるといのは俗説で,胃癌胃潰瘍(かいよう)の瘢痕(はんこん)などのために幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)や閉塞(へいそく)が起こって,胃の内容物がたまり,胃が拡張した状懸をいう。また,胃の自律神経の機能失調により,胃液や嚥下(えんげ)した空気により拡張することもいう。胃アトニー時には軽度に認められるが特に心配はない。胃の支配神経の異常時などに認められる場合は,経口的に管を胃に挿入して,内容を排除することがある。胃潰瘍,胃癌による幽門狭窄の場合は,原疾患の治療が必要。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胃拡張」の意味・わかりやすい解説

胃拡張
いかくちょう
gastrectasis

胃の病的な拡張をいう。慢性胃炎を基盤として,胃を支配する自律神経がアンバランスになった結果,胃壁の筋肉が麻痺して起ると考えられているが,器質的な原因の存在することもある。多くはやせて消化不良性の症状を訴え,たびたび水分をほしがる。胃部に振水音があるのが特徴で,胃運動機能は低下し,胃液中の遊離塩酸は過剰になっている。急性胃拡張の場合は緊急な処置が必要である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「胃拡張」の解説

胃拡張

 胃が拡張した状態.多くの場合過食によるとされる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android