胃に拡張が起こることで,胃内容が2~4lに達することもある。胃壁の緊張の消失により急速に胃が拡張し,胃内容を吐出する急性胃拡張と,幽門狭窄があって胃内容が十二指腸へ排出できなくなり2次的に胃が拡張する慢性の胃拡張がある。急性胃拡張症は,手術後や急性感染症,尿毒症,薬物中毒,電解質異常など重い全身疾患が基礎にあって,数時間から数日の間に胃壁の緊張が失われて収縮力がなくなり,胃が著しく拡張した状態である。頑固な嘔吐をくりかえし,脱水症状を呈し急速に全身状態が悪化する。治療としては,胃内容をゾンデを用いて吸引し,輸液による全身状態の維持が必要である。慢性の胃拡張は主として幽門狭窄によるもので,幽門肥厚症,十二指腸潰瘍,癌などがおもな原因となる。成人にみられるときは症状は徐々に起こり,何日も前の食物が胃内にたまっているにもかかわらず食事をとることができ,かつ食後数時間以上を経て嘔吐することが多いので,幽門通過障害の発見がおくれることがある。
執筆者:金子 栄蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
胃の筋層が弛緩(しかん)し、収縮力を失った状態で、胃は無緊張の拡張した袋となる。胃内容の排出が障害され、分泌液、摂取物が貯留し、胃は著しい大きさに達する。病因として、手術ことに開腹手術、麻酔あるいは外傷後にみられる急性胃拡張は、最近の麻酔、輸液の進歩により著しく減少した。内科的には胃の幽門部や十二指腸の消化性潰瘍(かいよう)あるいは癌(がん)などによる器質的幽門狭窄(きょうさく)に続発するもの、また感染症、敗血症、尿毒症、薬物中毒、肝硬変、癌などの慢性全身衰弱のときにみられる。最近は糖尿病に併発する胃症が増加している。
全消化管疾患の約0.1%にみられる。症状は、頑固な嘔吐(おうと)が持続し、脱水症状、さらに循環障害をきたす。診断は腹部X線検査で、拡張した胃と胃内容の停滞の証明、また幽門狭窄をきたす原疾患が証明されることも多い。治療は、持続的に胃内容を吸引し、同時に輸液と電解質の補給、胃運動亢進(こうしん)剤の注射で、同時に原疾患の治療をする。
[増田久之・荒川弘道]
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