演劇,オペラ,バレエなど舞台芸術における稽古の最終仕上げ段階をいう。それは演出家の演出意図(演出)が総合的に初めて舞台上に現実化する〈総稽古〉の場でもある。演劇を例にとり通常の稽古の手順を説明すれば,まず戯曲作者自身が自作をスタッフ,キャストに読んで聞かせる〈本読み〉から始まり,演出家を中心にして俳優たちによって行われる脚本理解の〈読合(よみあわ)せ〉稽古,立って動きをつけながら行う〈立(たち)稽古〉〈衣裳合せ〉となり,このような過程を経て脚本を肉体化した演技者たちが,公演時同様に調整された舞台装置,舞台照明,音響効果などの舞台条件下で,演出家の指揮のもと舞台監督の指示に従って行われるのがこの舞台稽古(総稽古)である。これをゲネプロとも言う習慣はドイツ語のゲネラルプローベGeneralprobeに由来する。フランス語ではこれをレペティシヨン・ジェネラールrépétition généraleといい,英米ではドレス・リハーサルdress rehearsalとよばれるものがほぼこれに相当する。この制度が日本に移入されたのは1911年(明治44)の帝国劇場開場以後,つまりは西欧演劇の影響を強く受けた近代以降のことであり,新劇界などではとりわけ重視されてきた。近年,能楽界でも〈申合(もうしあわ)せ〉という各役が集まってする予行演習(普通は装束は用いない)を発展させた舞台稽古が,特別の作品や能楽堂以外の公演開場の場合に行われるようになっている。歌舞伎界ではかつて初日や2日目を舞台稽古に当てるような風習があったが,近年では初日前の舞台稽古が定着し,新作の場合はとくに欠かせない。
具体的に舞台稽古は次のようにして行われる。まず公演会場の舞台に装置が組まれ,照明器具が仕込まれてその調整や音響効果の音量調整が行われる。次いで,メーキャップをし,舞台衣裳,かつらをつけ扮装した役者たちをまじえ,各場ごとに場当り稽古をする。ここで役者たちの位置ぎめはもとより,装置,照明,音響効果との相互関係が確認され,それぞれの微調整が行われる。また装置や諸道具の転換法も具体的に決められる。最後に演技も含め,各パートの展開が芸術的にも物理的にも演出家の意図どおり,円滑に進行するかどうかの最終確認のため,多少の齟齬(そご)はあっても,進行を中断させることなく,全幕総仕上げの通し稽古が行われる。そして終了後には最終的ダメ出しが各パート責任者や役者たちに対してなされる。このように舞台稽古は通常,各パートの仕込み・調整,総合的な場当り稽古,最終仕上げの通し稽古の3段階に分かれ,通常2日ないし3日の日数をかけて行われる。
執筆者:石沢 秀二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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