日本大百科全書(ニッポニカ) 「花園天皇宸記」の意味・わかりやすい解説
花園天皇宸記
はなぞのてんのうしんき
花園天皇の日記。1310年(延慶3)10月から32年(元弘2)11月まで、断続的ながら記されている。自筆本が伏見宮(ふしみのみや)家に伝存されてきたが、宮内庁書陵部に移管されたのち、35巻の巻子本(かんすぼん)に整理された。写本もあるが、写本によってのみ知られる記事はごくわずかで、原本散逸の時期が比較的早かったことを推定させる。史上まれにみる好学の天皇で、学問、文学、宗教、有職故実(ゆうそくこじつ)など万般にわたる卓見が随所にみられる。また自らその渦中にあった両統迭立(てつりつ)問題や、元弘(げんこう)の変など歴史上重要な記事を含み、貴重な史料である。『列聖全集』本は多くの誤りがある。『増補史料大成』本がこれを校正し、また若干の増補があり、ほとんどの記事をこれでみることができる。
[田中博美]