花道(歌舞伎)(読み)はなみち

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

花道(歌舞伎)
はなみち

歌舞伎(かぶき)劇場の舞台機構。舞台と同じ高さで、下手(しもて)(客席から見て左側)寄りの客席を縦断する通路をいう。単に俳優が舞台へ出入りするばかりでなく、「出端(では)」や「引込み」の芸そのほか重要な演技が多く行われ、川や空中、あるいは本舞台から遠方の場所に想定することもあって、歌舞伎の演出上の役割はきわめて大きい。

 由来については、舞台の俳優に纏頭(はな)(祝儀)をひいき客から運ぶための歩み板が進化したとか、民俗芸能の花の舞の演者の通路に関係あるとか、いろいろな説があるが、いずれも根拠に乏しく、むしろ、役者を「花」に例え、その花が通る道のはなやかさを意味する命名と考えたほうが妥当であろう。貞享(じょうきょう)・元禄(げんろく)(1684~1704)ごろ、劇場の舞台面積の拡大に伴い、従来の能舞台様式に変化が生じ、橋懸(はしがか)りの機能が失われ、そのかわりに発生したもので、享保(きょうほう)(1716~36)ごろから本舞台の延長としてしだいに定着するようになった。なお、宝暦(ほうれき)(1751~64)ごろには上手(かみて)寄りの通路(東の歩み)が発達して、もう一つ花道が成立、これを「仮(かり)花道」とよび、従来の花道を「本(ほん)花道」ともいうようになった。現在の仮花道は定設ではなく、必要に応じて仮設することが多い。

 別に相撲(すもう)では、土俵の四方の角に通ずる4本の通路のうち、とくに力士・行司・審判委員が土俵に向かう裏正面寄りの東西の通路を「花道」という。平安時代の相撲節会(すまいのせちえ)で、相撲人(すまいびと)が出場に際し、左近衛(このえ)所属と右近衛所属がそれぞれ葵(あおい)と夕顔の造花を髪に挿して、相撲場に入場した故事による名称といわれている。

[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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