下手(読み)ヘタ

デジタル大辞泉 「下手」の意味・読み・例文・類語

へた【下手】

[名・形動]《「はた(端)」あるいは「へた(端)」の変化で、奥深くない意からか》
物事のやり方が巧みでなく、手際が悪いこと。また、そのさまや、その人。「泳ぎが下手な人」「字をわざと下手に書く」「人の使い方下手だ」⇔上手じょうず
なまはんかであること。なまじっかなことをして結果が悪くなること。また、そのさま。「下手小細工をすると大事になりかねない」「下手口出しはできない」
中途半端なこと。満足できるような程度でないこと。また、そのさま。「彼の蔵書は下手図書館の比ではない」「下手な画家顔負けの絵」
[派生]へたさ[名]
[類語](1拙劣拙悪稚拙未熟幼稚不細工無器用不得手不得意へぼ下手くそから下手からっ下手つたなまずいたどたどしいぎこちない

しも‐て【下手】

下の方。下座しもざの方。「下手に座をとる」⇔上手かみて
川の流れていく方。下流。⇔上手うわて・かみて
芝居の舞台の、客席から見て左の方。⇔上手かみて
[類語]下方したしも下座げざ下座しもざ末席末座

した‐て【下手】

《「したで」とも》
位置・方向が下のほう。特に、風下川下などをいう。しもて。⇔上手うわて
相手より地位や能力が下であること。また、その地位など。
へりくだること。⇔上手うわて
「男は言葉を柔げて―に頼むように」〈魯庵社会百面相
相撲で、組み合ったときに差し手で相手のまわしを取ること。また、その手。⇔上手うわて
囲碁・将棋で、対局者のうち段位・力量の劣ったほう。⇔上手うわて
犬追物いぬおうもので、自分の馬の後に立つ射手。
[類語]下部

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「下手」の意味・読み・例文・類語

した‐て【下手】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「したで」とも )
  2. 下の方。特に、風下、川下などをさしていう。⇔上手(うわて)
    1. [初出の実例]「つよき馬をばうは手にたてよ、よはき馬をばした手になせ」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. 「した手よりよこさまに立まはる鳥そかひに鷹ぞよりて空とる」(出典:西園寺鷹百首(14C後‐15C前か))
  3. 他より劣ること。また特に、下の地位、または、その地位にあるもの。主従関係において従う方のもの。下位。下輩。
    1. [初出の実例]「それもかたみの有明の月にならべばしたてにやなり侍らん」(出典:千五百番歌合(1202‐03頃)一三二二番)
    2. 「元来其の心闊如として、人の下風(シタテ)に立ん事を思はざりければ」(出典太平記(14C後)六)
  4. 犬追物で、自分の馬の後に立った射手。⇔上手。〔犬追物付紙日記(1460‐66頃か)〕
  5. 相撲で、相手の差し手の下から相手のまわしを取ること。また、その手。⇔上手。〔無刊記刊本碧巌鈔(1620‐40頃)〕
  6. ( 形動 ) ( 「したで」の形で用いられることが多い ) 人にへりくだるような態度をとること。また、そのさま。→したてに出る
    1. [初出の実例]「和(やさ)しく下手(シタデ)に涙で口説かば万一は折れもすべきに」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴三四)
  7. 特に、囲碁や将棋の対局者で、段位、級位の下の者。また、技量の劣る者。〔モダン新用語辞典(1931)〕

げ‐しゅ【下手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 物事にみずから手をくだすこと。
    1. [初出の実例]「若群党共殺。止移下手者及頭首之人」(出典:律(718)賊盗)
    2. 「此訴人は、汝十三歳の時、備前の国に在し時、とらへし所の魚類也。まさしく下手せすといへとも、漁人にともなひし故に、訴申所也云云」(出典:山王絵詞(1310頃)八)
  3. ( ━する ) 物事に手をつけること。着手。
    1. [初出の実例]「空によりて意想を回し、大略慮至れば、直に工業に下手し」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉二)
  4. 身分などの低い人。人の下についている人。下輩。下種(げす)
    1. [初出の実例]「宣孝朝臣、依彼国住僧道覚之下手、公家有召」(出典:左経記‐長元四年(1031)正月二八日)

しも‐て【下手】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「て」は方向・方面の意 ) したの方。下(しも)の方。⇔上手(かみて)
  2. 川の流れていく方。下流。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
  3. 劇場の舞台の、客席から見て左側の部分。しもざ。
    1. [初出の実例]「この時下座にて人音するゆゑ、下手(シモテ)の方へ小隠れする」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立)
  4. 部屋などで、地位の低い人のすわる方。
    1. [初出の実例]「知県公庁の広間に着坐すれば〈略〉警吏は元龍唐狛を下手(シモテ)の左に吟蜩子を右に引きすゑて」(出典:露団々(1889)〈幸田露伴〉一九)
  5. 魚網引綱の右の方。
    1. [初出の実例]「よわくひけば、かみてしもての綱ゆるびてわろければ」(出典:袖中抄(1185‐87頃)二〇)

へた【下手】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 「はた(端)」あるいは「へた(端)」の変化したもので、奥深くないの意からか )
  2. 物事に巧みでないこと。拙劣であること。劣ること。手ぎわの悪いこと。また、そのさまや人。
    1. [初出の実例]「取るまじき所を取り、捨つまじき所を捨つるはへた也」(出典:連理秘抄(1349))
  3. なまじっかなことをして結果が悪くなること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「額の汗を下手(ヘタ)に拭と、色男の面が藍隈になる」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)四)
    2. 「へたして、小者どもにたかられるな」(出典:二つの話(1946)〈井伏鱒二〉)
  4. 身分が卑しいこと。また、性質行状のよくないこと。また、そのさまや人。
    1. [初出の実例]「わろき身を、へたとも云也」(出典:袖中抄(1185‐87頃)二)

くだり‐て【下手】

  1. 〘 名詞 〙 細工の劣るもの。安価な下等品。安物。
    1. [初出の実例]「くだり手のかたし目貫」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「下手」の読み・字形・画数・意味

【下手】かしゆ・げしゆ

みずからする。

字通「下」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「下手」の意味・わかりやすい解説

下手
しもて

上手」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android