自然物を応用した笛玩具(がんぐ)。草の葉を唇(くちびる)にあてて笛のように鳴らすもの、あるいは葉を巻いて笛のようにつくったものなど、材料によっていろいろな種類がある。古くから子供の手作りによる季節玩具として親しまれ、平安時代中期の『うつほ物語』に「人の遊びせん所には、くさかりぶえ吹くばかりの心どもにて、いと無心にて侍(はべ)り」とあり、草刈り笛の名でよばれた。カシ、シイ、ナンテン、ツバキなどの若葉を用いる「柴(しば)笛」、ショウブの葉の重なった部分を80センチメートルほどに切り取り、下部を指で押さえながら吹き鳴らす「菖蒲(しょうぶ)笛」、ムギの葉の先端を摘み取り、中央の芯葉(しんば)を巻いて吹き鳴らす「麦笛」、アシの葉を材料にした「芦(あし)笛」などがある。
[斎藤良輔]