稗史(読み)はいし

精選版 日本国語大辞典 「稗史」の意味・読み・例文・類語

はい‐し【稗史】

〘名〙
① (「正史」に対して) 公認されない歴史。重要でない事柄を記した歴史。また、民間の歴史。
② (稗官①が書き記したような民間の物語伝説もつまらないながら歴史であるとの立場から) =はいかん(稗官)
※通俗醒世恒言(1790)序「子相、降志辱気、舎彼取此、稗史夷曲以為恒言者、抑醒世之意乎」
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙緒言「今我国に行はるる小説稗史(ハイシ)は其類、其数幾千万とも限りをしらず」

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デジタル大辞泉 「稗史」の意味・読み・例文・類語

はい‐し【×稗史】

昔、中国で稗官が民間から集めて記録した小説風の歴史書。また、正史に対して、民間の歴史書。転じて、作り物語。小説。
[類語]小説物語作り話創作稗官はいかんフィクションノベルロマンはなし叙事ストーリーお話虚構説話口碑こうひ伝え話昔話民話伝説言い伝え

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世界大百科事典 第2版 「稗史」の意味・わかりやすい解説

はいし【稗史 bài shǐ】

中国で物語や民間の言い伝えを記録した文芸をいう。それが稗と呼ばれるのは,《漢書芸文志に〈小説家の一派は,思うに稗官から出た〉とあり,〈街談巷説道聴塗説〉を記録して小説が作られたとあるのによる。稗はヒエなどの穀物であるが,注によれば,こまごまとした小さな話を記録するから稗官というのだとも,その官職自体が小さいのでそう呼ばれたのだともいう。雲夢(うんぼう)出土の秦簡の中に稗官の語が見え,実際にそうした官があったことが確かめられるが,その職務民間説話採集と結びついていたかどうかは,なお不明である。

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