菊慈童(読み)キクジドウ

デジタル大辞泉 「菊慈童」の意味・読み・例文・類語

きくじどう【菊慈童】

穆王ぼくおうに愛された侍童じどう。罪を犯して南陽郡酈県れきけんに流され、その地で菊の露を飲んで不老不死仙人になったという。
謡曲枕慈童まくらじどう」の観世流における名称

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精選版 日本国語大辞典 「菊慈童」の意味・読み・例文・類語

きくじどう【菊慈童】

  1. [ 一 ] 中国の仙童。容姿が美しく、周の穆王(ぼくおう)に愛されたが、一六歳の時、罪のため南陽郡酈県(れきけん)に流される。しかし菊を愛し、菊の露を飲んで不老不死になったという。画家題材とされる。慈童。→菊水[ 一 ]
  2. [ 二 ] 謡曲。「枕慈童」の別名観世流で用いる。
  3. [ 三 ] 歌舞伎所作事。長唄。本名題「乱菊枕慈童」。作詞者未詳。杵屋忠次郎作曲。宝暦八年(一七五八江戸市村座初演。狂言星合源氏車」中の曲。
  4. [ 四 ] 長唄「乱菊枕慈童」を琴唄にした曲。
  5. [ 五 ] 歌舞伎所作事。長唄。三世河竹新七作詞。三世杵屋正次郎作曲。明治二五年(一八九二東京歌舞伎座初演。新古演劇十種の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「菊慈童」の意味・わかりやすい解説

菊慈童 (きくじどう)

(1)能の曲名。観世流の名称で,他流はすべて《枕慈童(まくらじどう)》と称する。
枕慈童
(2)歌舞伎舞踊。長唄。1758年(宝暦8)7月江戸市村座初演。本名題《乱菊枕慈童(らんぎくまくらじどう)》。作詞堀越二三治,作曲杵屋(きねや)忠次郎。人形後見藤井小八郎を市村亀蔵(のちに9世羽左衛門),人形菊慈童を中村初五郎が演じた。謡曲《菊慈童》を翻案したもの。舞踊中絶,現行は能同然の扮装で上演される。ほかにも《枕慈童》や《菊慈童》として何度か作曲上演されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菊慈童」の意味・わかりやすい解説

菊慈童
きくじどう

能の曲名。四番目物。作者未詳。各流にあり,観世流以外は『枕慈童』という。観世の『枕慈童』は別の曲。中国の魏の文帝の臣下 (ワキ) が,勅命によりれき県山のふもとに湧出る薬水をたずねていくと,菊の花の咲き乱れた山中の庵 (舞台正面の菊籬をめぐらした一畳台に枕を置き,大小前に菊籬をつけた藁屋に引回しをかける) で菊慈童 (シテ〈慈童面,黒頭,法被か唐織壺折,菊の葉うちわ〉) に会う。周の穆 (ぼく) 王に仕えた慈童で,枕をこえた罪で流されたが,王から賜わった枕の『普門品』の2句の偈 (げ) を菊の葉に書き写したところ葉の露がしたたって不老不死の薬となり,それを飲んで 700歳を保っていることを語り,その菊水をすすめて,慈童は山路の仙家に入る。小書 (こがき) に,金剛流の「前後」「盤渉 (ばんしき) 」,梅若の「遊舞之楽」などがある。『太平記』巻十三「龍馬進奏事」の話を出典とするという。長唄にも取入れられているほか,上方舞に同名曲がある。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「菊慈童」の解説

菊慈童
〔竹本, 長唄〕
きくじどう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹新七(3代)
初演
明治25.7(東京・歌舞伎座)

菊慈童
(通称)
きくじどう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
乱菊枕慈童
初演
宝暦8.7(江戸・市村座)

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世界大百科事典(旧版)内の菊慈童の言及

【枕慈童】より

…能の曲名。観世流は《菊慈童》と称する。観世流でいう《枕慈童》は同趣向の別作品。…

※「菊慈童」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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