小書(読み)こがき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

小書
こがき

能の特殊演出。通常の演出とは異なり,詞章囃子扮装,作り物などを添加,省略したり,入替えたりする。番組曲名の左脇に少し下げて小さく書き添えるところからいう。曲の演出に変化を求めたために起り,家元自流習事 (ならいごと) と定めたもので,重い扱いとなることが多い。 600種ほどが数えられる。

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デジタル大辞泉の解説

こ‐がき【小書(き)】

[名](スル)
文書の中に注などを小さな文字で書き入れること。また、その書き入れ。
の特殊演出のとき、番組の曲名の左わきに小さくその演出を表す名称をつけ加えること。また、その特殊演出。

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世界大百科事典 第2版の解説

こがき【小書】

能,狂言用語で,普通の奏演法とは異なる特殊な奏演法をいう。能でも狂言でも,謡・囃子・所作のすべての面にわたって流派ごとに一応の規範が定められているが,ある部分については二つ以上の奏演法が認められていて,奏演者裁量に任されていることがある。その場合,そのうちの一つを基本の奏演法とし,他を変形の奏演法(〈替エ(替)〉と総称する)と規定していることが多い。そうした替エの奏演法のうち,伝授を受けなければ奏演を許されない事項(これを〈習イ〉と総称する)が小書の主体となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

小書
こがき

能の特殊演出のこと。曲目の左わきに小さく書き添えるため、この名がある。小書の演出が固定したのは江戸中期以降と考えられ、今日1000種ほどが各流各役に制定、登録されている。小書つきでは曲のねらいが変化し、また強調され、その上演は常の演能より重く扱われる。面(おもて)、装束、作り物、囃子(はやし)から登場人物まで変化することがあり、脚本が短くなり、あるいは別の脚本が挿入される場合もある。狂言にも少数の小書があるが、能のような本質的な変化はない。

[増田正造]

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精選版 日本国語大辞典の解説

こ‐がき【小書】

〘名〙
① 小さな文字で書くこと。また、その文字や、そのための筆。
② 詳細に書くこと。文章の注、内わけなどをこまかく書き入れること。また、そのもの。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉三「一人道行は此ところ大不出来大不出来と絵本の小がきに書かれるのだ」
③ 能楽の特殊演出のときに、番組の曲目の左側に、その種類を示す名称を小さくつけくわえること。また、その特殊演出。

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世界大百科事典内の小書の言及

【懺法】より

…真言系には懺法はないが,《金剛界礼懺(れいさん)》《胎蔵界礼懺》がこれに相当すると考えられる。(2)能《朝長(ともなが)》の小書(こがき)(変型演出の名)。後ジテ源朝長の霊の出の囃子事(はやしごと)は,通常は〈出端(では)〉だが,それをまったく別の〈懺法〉に変える。…

【習】より

…しかし,一般に大曲,秘曲と目されている演目,たとえば能の《石橋(しやつきよう)》や《道成寺》,老女物の《姨捨(おばすて)》《関寺小町》《檜垣》《鸚鵡(おうむ)小町》《卒都婆小町》など,また狂言の《釣狐》《花子(はなご)》などは,各流派,各役種とも習に扱っている。また,通常の演じ方とは替えて演ずることが習に結びつく一つの要件で,小書(こがき)(特殊演出)の能は原則として習であり,同様の意味で,〈一調(いつちよう)〉という演奏形式はつねに習である。 習には伝授の順序が定められており,演目ごとに初伝(しよでん)・中伝・奥伝,あるいは小習(こならい)・中習(ちゆうならい)・大習(おおならい)・重習(おもならい)・別習(べつならい)・一子相伝(いつしそうでん)などと名づけられた等級がある。…

【音取】より

…能の囃子のなかでも,きわめて特異な構造になっている。《翁》付脇能のほか,老女物やとくに重要な小書(こがき)付きの能の冒頭に一曲の序曲として用いられる。そして曲柄に応じたいくつかの旋律があって,〈真(しん)ノ音取〉〈鬘(かつら)ノ音取〉などという名称が用いられる。…

【連獅子】より

…(1)能《石橋(しやつきよう)》の小書(こがき)(変型演出の名)。観世流は〈大獅子(おおじし)〉と称する。…

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