能の曲名。観世流は《菊慈童》と称する。観世流でいう《枕慈童》は同趣向の別作品。四番目物。作者不明。シテは慈童。魏(ぎ)の文帝に仕える廷臣(ワキ)が,勅命を受けて薬水の水源を探りに酈県山(れつけんざん)/(てつけんざん)に赴く。その山奥の菊の咲き乱れた仙境に,慈童という童顔の仙人(シテ)がいた。慈童は太古の周の穆王(ぼくおう)に仕えていた者だが,王の枕をまたいだ罪でこの山に流された。そのとき法華経の偈(げ)を枕に書いて賜ったので,その妙文(みようもん)を菊の葉にうつして流れに浮かべると,葉から滴るしずくが不老不死の薬となり,それ以来慈童は数百年間,年をとらなかったのである。慈童は勅使の前で楽しげに舞を舞い,帝に長寿を捧げて祝福の言葉を述べる(〈楽(がく)・ノリ地〉)。めでたく楽しい小品の能。楽とそれに続く長いノリ地が見せどころ。喜多流だけは,四句の偈の由来を説くクセが楽の前に入る。
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能の曲目。四番目物。金春(こんぱる)、宝生(ほうしょう)、金剛、喜多(きた)流現行曲。ただし金春流は昭和の復曲。観世(かんぜ)流ではこの能を『菊慈童』とよぶ。観世流の『枕慈童』は時代を800年後に設定した同じ主題の別の能で、江戸時代の改作である。深山に湧(わ)く薬の水を尋ねる魏(ぎ)の文帝の使者(ワキ)は、700年を美少年の姿のまま生きる慈童(シテ)と出会う。周の穆(ぼく)王に仕えた慈童は、帝の枕をまたいだ罪でこの深山に流されたが、枕に書かれた法華経(ほけきょう)の文章と、菊の葉の露の奇跡で、不老不死の仙界に生きている。慈童は美しく舞い、長寿の薬の水を帝に捧(ささ)げて終わる。金剛流には、現在は省略されている前場、慈童が山に捨てられる場面も演ずる演出が残っており、類曲の『彭祖(ほうそ)』がある。なお、この能による長唄(ながうた)に1860年(万延1)11世杵屋六左衛門(きねやろくざえもん)(通称根岸の勘五郎)作曲による『枕慈童』がある。
[増田正造]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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