(読み)ワラビ

デジタル大辞泉 「蕨」の意味・読み・例文・類語

わらび【×蕨】

コバノイシカグマ科の多年生のシダ。草原など日当たりのよい所に生え、高さ約1メートル。葉は3回羽状に裂け、羽片の裏面の縁に胞子嚢ほうしのうをつけ、冬には枯れる。春のこぶし状に丸まっている若葉は食用に、根茎は砕いてでんぷんとする。 春》「雪渓のとけてとどろく―かな/楸邨
紋所の名。1の若芽を図案化したもの。
[類語]ぜんまい

わらび【蕨】[地名]

埼玉県南東部の市。もと中山道宿場町綿織物双子縞ふたこじまの産地として発展した。面積は約5平方キロメートルで全国最小の市。人口7.1万(2010)。

わら【×蕨】

わらびをいう女房詞

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精選版 日本国語大辞典 「蕨」の意味・読み・例文・類語

わらび【蕨】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. シダ類ウラボシ科の落葉多年草。各地の山野の向陽地に生える。早春、先端が拳状に巻いた新葉を出す。成葉は二~四回羽状複葉で長柄をもつ。葉身は卵状三角形で長さ八〇センチメートルに達し、小葉はさらに羽裂する。胞子嚢(ほうしのう)群は裏側にまいた葉の縁につく。若葉は早蕨(さわらび)と呼び食用。根から蕨粉をとって餠や糊の原料とする。漢名、蕨。《 季語・春 》
      1. [初出の実例]「卅六文和良比卅六巴」(出典:正倉院文書‐天平宝字八年(764)三月一八日・吉祥悔過所銭用帳)
      2. 「煙たちもゆとも見えぬ草の葉をたれかわらびと名づけそめけん〈真静〉」(出典:古今和歌集(905‐914)物名)
      3. 「狗脊(ぜんまい)の塵にゑらるるわらびかな〈嵐雪〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)四)
    2. 紋所の名。の若芽を図案化したもの。三つ割り蕨、蕨桐、抱き蕨などがある。
      1. 三つ割り蕨@蕨桐
        三つ割り蕨@蕨桐
      2. [初出の実例]「芸者小三褄を端折り、草履にて、蕨のつきたる提ぶらをさげ出で来り」(出典:歌舞伎・善悪両面児手柏(妲妃のお百)(1867)五幕返し)
  2. [ 2 ] 埼玉県南東部の地名。南北朝時代、扇谷(おうぎがやつ)上杉氏が築城した蕨城城址がある。江戸時代は、中山道板橋と浦和との間の宿駅。江戸末期から双子縞(ふたこじま)の綿織物の生産が盛んになる。工業・住宅都市として発展。昭和三四年(一九五九市制

蕨の補助注記

( [ 一 ]について ) 上代以来、和歌では早春の景物とする。中古の歌では「わらび(藁火)」と掛けた上で、「萌え」と掛けた「燃え」や「煙」「たく(焼)」などと縁語にしたりする。散文では、採取して食用にするものとして現われる。


わら【蕨】

  1. 〘 名詞 〙(わらび)をいう女房詞。
    1. [初出の実例]「蕨はわら。葱はうつほ。如異名を被付」(出典:海人藻芥(1420))

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改訂新版 世界大百科事典 「蕨」の意味・わかりやすい解説

蕨[市] (わらび)

埼玉県南部の市。1959年市制。人口7万1502(2010)。市域は荒川左岸の低湿地にあり,面積は5.09km2で全国最小の市である。戦国時代に渋川氏の蕨城があったが,江戸時代には荒川の戸田の渡しをひかえた中山道の宿駅として,また近郊の綿織物の集散地として栄えた。綿織物は文政年間(1818-30)に塚越村を中心に始められ,同村の糸商2代高橋新五郎が発展に尽力,1837年(天保8)に織機102台,43年には生産量8万反余に達した。その子3代新五郎はイギリスからの輸入糸を用いて60年(万延1),双子織(塚越双子)を創始した。明治末から大正初年の最盛期には機業家は4000戸を超えたが,第2次大戦後,昭和30年代ころから若年労働力の不足,需要の減少によって衰微した。戦中・戦後に進出した化学,印刷,鉄鋼,通信機器などの工場は,1970年以降,市外へ移転,跡地へ高層マンションが進出した。現在はJR京浜東北線,国道17号線(中山道)が通じる首都近郊の住宅都市として発展し,人口密度5桁の過密都市である。
執筆者:

中山道の大宿。地名の初見は室町時代成立の《市場之祭文》。1614年(慶長19)下戸田村元蕨より60戸を移して宿駅が整備され,延享期(1744-48)以降蕨宿を称した。1695年(元禄8)の検地で人馬各50,地子免1万坪。江戸より4里28町,宿内往還約20町。天保期(1830-44)には戸口403軒・2223人,本陣1,脇本陣2,旅籠23,宿高1418石余,問屋3。市日は7月11日,12月26日。江戸時代初頭の曲がりくねった狭い旧中山道は1683年(天和3)に幕命で直線的往還に整備された。宿内を用水堀が囲み,防火機能をも果たした。しばしば大火にあい,特に1725-26年(享保10-11)の大火は蕨宿に大きな打撃を与えた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蕨」の意味・わかりやすい解説

蕨(市)
わらび

埼玉県南東部、さいたま市の南東に接する市。1959年(昭和34)市制施行。JR京浜東北線、国道17号が通じる。付近一帯は荒川の沖積低地であるが、集落は古くから自然堤防上に位置し、現在は全市域が市街化し、農地はわずかである。中世蕨城があったが、江戸時代は中山道(なかせんどう)第二の宿場町として栄え、戸田の渡しを控えて、浦和宿や大宮宿より人口が多かった。いまでも11月に「宿場まつり」が盛大に行われている。本陣記念碑に隣接して歴史民俗資料館が1990年(平成2)に開設した。また、江戸末期高橋新五郎によって始められた双子縞(ふたごじま)とよばれる綿織物の生産が盛んになり、昭和初期まで県南綿織物生産地の中心であった。現在は各種工業が盛んで、コンピュータ関連企業の進出がみられる。面積5.11平方キロメートルで全国最小面積の市だが、人口密度は1平方キロメートル当り1万4536人(2020)で、東京特別区をのぞくと全国一の過密都市である。面積5.11平方キロメートル、人口7万4283(2020)。

[中山正民]

『『蕨市の歴史』全2巻(1967・蕨市)』『『新修蕨市史』全5巻(1991~1995・蕨市)』


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百科事典マイペディア 「蕨」の意味・わかりやすい解説

蕨[市]【わらび】

埼玉県南東部の市。1959年市制。荒川北岸の沖積低地を占める。全国一面積の小さな市で,人口密度も東京23区の平均よりも高い。中心市街は近世の中山道の宿場町で,1893年東北本線蕨駅の開設以来,東京都の近郊地として発展。ミニ工業団地が造成されて化学,印刷,通信機器などの工場が急増し,住宅地化も顕著。綿織物双子縞(ふたごじま)を特産。5.11km2。7万1502人(2010)。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蕨」の解説

蕨 (ワラビ)

学名:Pteridium aquilinum var.latiusclum
植物。イノモトソウ科の多年草

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事典・日本の観光資源 「蕨」の解説

(埼玉県蕨市)
中山道六十九次」指定の観光名所。

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