社寺建築において,虹梁(こうりよう)や頭貫(かしらぬき)・台輪(だいわ)の上にあり,頂部に斗(ます)をおいて棟木や桁・通肘木(とおりひじき)を受ける繰形(くりがた)付きの幅広い材をいう(社寺建築構造)。カエルが足を広げた形に似ているところからこの名がある。はじめは,虹梁上で上方の荷重を受ける構造材として1枚の厚い板から造られていたが,平安時代後期に装飾材として組物(くみもの)(建築組物)と組物の中間におく厚みの薄い輪郭だけのものが現れ,以後これが大いに発達する。前者を板蟇股,後者を本(ほん)蟇股または刳抜(くりぬき)蟇股という。本蟇股は初期には左右の脚を別々の斜材で造っており,いくらか構造材としての機能を残していたが,鎌倉期ころから1枚の板をくりぬき,両脚間に唐草などの彫刻を入れるようになる。時代とともに中の彫刻は複雑になり,厚みも増して,桃山時代には輪郭からはみ出るものがでてくる。蟇股は時代の特徴が最もよく表れており,建立年代を判定する上によい手がかりとなる。
執筆者:浜島 正士 日本の板蟇股の起源は中国にある。おそくも漢時代(前2世紀~後3世紀初めころ)から北魏(5世紀)ころまで使われた梧(ご),すなわち直線的な杈手(さす)が,6世紀半ばから曲線的な人字形を呈して8世紀まで続く。同じ系統の人字形は日本の法隆寺金堂の勾欄(こうらん)下に現れている。曲線の杈手は唐代(7~10世紀)に一転して種々な曲線の板蟇股をうみ出し,それが10~11世紀の遼の木造建築に継承された。別に板蟇股の上に斗束(ますづか)を立てたものも広く利用されたが,日本では唐招提寺講堂に唯一の例があるのみで,しかも後の改造の結果になるといわれている。〈営造法式〉に見える駝峰(だほう)は北宋の板蟇股の一つのタイプを示すもので,同じ系統のものが近世にまで及んでいる。しかし日本の刳抜蟇股の祖形が中国にあるか否かはまだ明らかではなく,ただ近世になると煩雑な遺例が多少みられるにすぎない。
執筆者:村田 治郎
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…絵様は元来,彫像や画像の下図の意味であるが,建築部材の表面に彫られまたは描かれた文様をもいう。古代では構造がそのまま意匠となり,装飾のためだけの部材はほとんどなく,斗栱(ときよう)を雲形につくったり,板蟇股(いたかえるまた)(蟇股)に刳形をつけ,基壇や仏壇の嵌板(はめいた)に格狭間(こうざま)をつける程度であった。平安時代後期には本蟇股が装飾材として組物間に置かれ,やがてその中に唐草などの透彫(すかしぼり)彫刻がつけられ,装飾性を増すようになる。…
※「蛙股」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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