袋地(読み)フクロチ

精選版 日本国語大辞典 「袋地」の意味・読み・例文・類語

ふくろ‐ち【袋地】

  1. 〘 名詞 〙 他人の土地に囲まれていて、直接公道に通じていない土地。
    1. [初出の実例]「路地の奥は袋地らしく」(出典:大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉六)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「袋地」の意味・わかりやすい解説

袋地
ふくろじ

他人の土地に囲まれて公路に通じない土地(民法210条1項)。また、池沼河川または海岸を通るのでなければ公路に通じることができない土地や、公路に面していても崖(がけ)・岸があって公路と著しい高低の差がある土地も袋地と同じように扱われる(同法210条2項)。これらの土地は、袋地に対してとくに準袋地とよばれる。袋地の所有者は公路に出るために周囲の土地を通行する権利がある(同法210条)。通行の場所方法は、通行権者にとって必要最小限でかつ他の土地のためにもっとも損害の少ないものを選ばなければならない(同法211条1項)が、必要がある場合には通路開設することができる(同法211条2項)。他の土地の通行および通路の開設によって他の土地に生じた損害に対して通行権者は償金を支払わなければならない(同法212条)。袋地は、土地を分割した場合や土地の一部が譲渡された場合にも生じる。このような場合には、袋地の所有者は他の分割地または残余の土地を通行できるにとどまるが、償金を支払う必要はない(同法213条)。

 袋地に関連して、2021年(令和3)の民法改正前においては、他人の土地や設備導管等)を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、上記の相隣関係規定等の類推適用により、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができると解されていた。しかし、民法に明文の規定がないため、設備の設置・使用に応じてもらえないときや、所有者が所在不明であるときなどには、対応が困難であった。そこで、改正民法では、土地の所有者が、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるために必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用することができるものとした(民法213条の2第1項)。ただし、その場合における設備の設置または使用の場所および方法は、他の土地または他人が所有する設備のために、損害がもっとも少ないものを選ばなければならないとする(同法213条の2第2項)。そして、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所および方法を他の土地等の所有者および他の土地を現に使用している者に通知しなければならないとした(同法213条の2第3項)。

[高橋康之・野澤正充 2025年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「袋地」の意味・わかりやすい解説

袋地 (ふくろじ)

周囲を他の土地(囲繞地(いにようち))にかこまれ,だれでも通れる道路(公路)に達することができない土地をいう。池沼・海・崖などで公路に行くことが妨げられている土地も,準袋地として袋地なみに扱われる。袋地のままでは土地が死んでしまうので,民法は袋地利用者に,通行権を与えている(民法210条)。通行の場所および方法は通行権を有する者のために必要であって,かつ囲繞地にとって損害が最も少ないところを選ばなければならない(211条)。通行権者は対価を払わなければならないが,土地を分割して譲渡したために袋地が生じた場合には,当事者間で通行を前提として分譲されたものとみなされ,無償で通行することができる(213条)。袋地通行権をもつのは袋地の所有者,地上権者,妨害排除権能のある賃借権者である。単なる占有者(たとえば不法占拠者)には認められないというのが判例の立場である。
相隣関係
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む