被衣(かつぎ)(読み)かつぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「被衣(かつぎ)」の意味・わかりやすい解説

被衣(かつぎ)
かつぎ

本来は「かづき」といい、女子が外出に頭に被(かづ)く(かぶる)衣服のこと。平安時代から鎌倉時代にかけて女子は素顔で外出しない風習があり、袿(うちき)、衣の場合を「衣(きぬ)かづき」といった。室町時代から小袖(こそで)を用いるようになると、これを「小袖かづき」といい、武家における婚礼衣装にも用いられた。桃山時代以降は一般の上流階級婦女子もこれを用いて外出した。江戸時代中期以降は、形は同じであるが、頭にかぶりやすいように、衿(えり)肩明きを前身頃(みごろ)へ肩山より10センチメートルから15センチメートル下げてつけた。この特定の小袖を被衣(かづき)といった。町人のは町(まち)被衣といい、種々の色、模様のついたもので、女官のは御所(ごしょ)被衣といい、松皮菱(びし)など幾何学的区画による、黒地に白の熨斗目(のしめ)風の模様のついたものであった。布地はともに麻、絹で単(ひとえ)仕立て。江戸では明暦(めいれき)年間(1655~1658)には用いられなくなったが、京都では安永(あんえい)(1772~1781)のころまで用いられた。後世に至って「かつぎ」というようになった。

[藤本やす]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例