改訂新版 世界大百科事典 「計算書類付属明細書」の意味・わかりやすい解説
計算書類付属明細書 (けいさんしょるいふぞくめいさいしょ)
株式会社(および有限会社)の計算書類に付属して,その内容を補足する明細書。株主・社員の会社の経理に対し監督権を強化する趣旨で設けられた。株式会社の取締役は,毎決算期にこの明細書を作成し,これが,取締役会による承認,監査役による監査,大会社では会計監査人による監査を受けたうえで,株主および会社債権者に公示され,閲覧に供される(商法281条1項本文,281条ノ2,282条,商法特例法(略称)12条2項)。計算書類付属明細書に記載されるのは,〈貸借対照表,損益計算書及び営業報告書の記載を補足する重要な事項〉であり,そのうち必ず記載しなければならない事項は,(1)資本金および準備金の増減,(2)社債,社債以外の長期借入金および短期借入金の増減,(3)固定資産の取得および処分ならびに減価償却費の明細,(4)資産につき設定している担保権の明細,(5)保証債務の明細,(6)減価償却引当金以外の引当金の明細ならびにその計上の理由および額の算定の方法,(7)支配株主に対する債権および債務の明細,(8)子会社に対する出資の明細および各子会社が有する会社の株式の数,(9)子会社に対する債権の明細,(10)取締役,監査役または支配株主との間の取引および第三者との間の取引で会社と取締役,監査役または支配株主との利益が相反するものの明細,(11)取締役に支払った報酬の額および監査役に支払った報酬の額であり,さらに,大会社および中会社については,(12)担保として取得している自己株式および親会社の株式の明細,(13)リース契約により使用する固定資産および割賦販売等により購入した固定資産でその所有権が売主に留保されているものの明細,(14)関係会社に対する出資の明細および当該関係会社が有する会社の株式の数,(15)子会社との間の営業取引の明細ならびに各子会社に対する債権および債務の増減,(16)他の会社の役員または支配人を兼ねる取締役または監査役につきその兼務の状況の明細,(17)営業費用のうち販売費および一般管理費の明細などである(計算書類規則(略称)47,48条)。これらは,いずれも計算書類に記載される事項のうち重要なものの明細または計算書類に記載される事項に関係のある重要な事項の表示である。
なお,有限会社においては,各社員に帳簿閲覧権を与えた場合は,計算書類付属明細書の作成が免除される(有限会社法44条ノ2)。
執筆者:西山 忠範
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報