労働者の採用後,実際に労働させながら,その職業能力や勤務態度等から従業員としての適格性をみたうえで最終的に本採用するかどうかを判断するための期間ないし制度をいう。この期間は通常2~3ヵ月が多い。日本の企業の雇用体系はいわゆる定年制に代表されるように長期的な勤続雇用であることから,労働者の企業への最終的組入れにつき慎重を期したいという使用者の願望が試用期間を設ける理由となっている。そのため,実際に行われている試用期間は,単に労働者の労働力評価のみにとどまらず全人格的評価をも含む形で利用されることが多く,また試用期間中の労働内容や労働条件も本採用後のそれと基本的に異なるところはない。なお,実際上この試用期間としばしば混同されて利用される制度に〈見習期間〉がある。しかし,この二つは,前者が本採用前に既得の労働能力の評価を目的とするのに対し,後者は本採用後の労働能力の養成を目的とするという点で本来制度的には区別さるべきものである。試用期間中の労働関係の法的性質については,大別して本来の労働契約とは別個の契約が締結されているとする立場(予備契約説,無名契約説)と,すでに労働契約の締結はあるとする立場とがある。後者の立場は労働契約関係の展開のなかで試用期間のもつ意義をどう評価するかによりさらに見解が分かれている(停止条件説,解除条件説,解約権留保説)。今日の学説・判例は,一般にこれを解約権留保付労働契約の成立ととらえている。これによると,試用期間中は使用者には本採用後の場合よりも広い範囲の解約権行使が認められる。しかし,これが実質的には解雇にほかならないことから,その行使はあくまでも労働力評価という観点から従業員としての不適格性が客観的に認められる場合に限られ,組合活動や思想・信条を理由のそれや,その他一般に客観的・合理的理由のない解約権行使などは適法なものとは認められない。
執筆者:奥山 明良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報
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