(読み)かたり

精選版 日本国語大辞典 「語」の意味・読み・例文・類語

かたり【語】

〘名〙 (動詞「かたる(語)」の連用形の名詞化)
① 語ること。はなし。また、話のたね。語りつたえ。
万葉(8C後)九・一八〇一「葦の屋の 菟原処女(うなひをとめ)の 奥津城を 吾が立ち見れば 永き世の 語(かたり)にしつつ 後人(のちひと)の 偲ひにせむと」
② 能で、出来事や由緒(ゆいしょ)などを節のない、抑揚の少ない詞(ことば)で物語ること。また、その部分。主としてワキが演じる。
※謡曲・隅田川(1432頃)「これについてあはれなる物語りの候。この舟の向かひに着き候はん程に語って聞かせ申さうずるにて候(語り‐不合詞)ワキ さても去年三月十五日、しかも今日に相当りて候ふぞや」
狂言の台詞(せりふ)の中で、緩急抑揚をつけて語られる物語。また、その動作。
※虎明本狂言・夷大黒(室町末‐近世初)「カタリ そもそもひえいざんゑんりゃくじは、伝教大師くゎんむ天王と御心をひとつにして、ゑんりゃく年中にかいひゃくし給ふ」
④ 平曲などの節まわし。かたりくち。
⑤ 歌舞伎脚本の内容の概略を、七五調で述べた文章。番付などの外題の上に書き入れる。
[補注]「書紀‐雄略九年」に「大伴談連 談。此云箇陀利(カタリ)」とある。
[語誌](1)単独で用いられることは能・狂言の用法以外は少なく、「神語(かむがたり)」「歌語(うたがたり)」「物語(ものがたり)」など語られる内容の語を冠した例が多い。
(2)儀礼化された「語り」は、もとは地方共同体での神話伝承などを伝える行為であったが、中央集権化が進むにつれ大嘗祭に組み込まれ、「語部美濃八人」など語部の出身国や人数も固定されるに至って、地方の神話伝承は中央に吸収、支配された。→語部(かたりべ)
(3)歌の来歴を伝えた「歌語」は、文字で記されることによって固定化され、「語り」本来の行為を失った文学となり、「物語」に成長する。一方、文字と結びつかなかった「語り」は、琵琶三味線を伴った「平家語り」「義太夫語り」へと、二分化して、それぞれに発展した。

かた・る【語】

〘他ラ五(四)〙
① 物事を順序だてて話して聞かせる。物事をことばで述べて相手に伝える。話す。
※万葉(8C後)二〇・四四五八「にほどりの息長(おきなが)川は絶えぬとも君に可多良(カタラ)むこと尽きめやも」
徒然草(1331頃)二五「桃李もの言はねば、誰とともにか昔を語らん」
② 文章に節(ふし)をつけて読む。朗読する様に述べる。
※源氏(1001‐14頃)帚木式部卿の宮の姫君に朝顔たてまつり給ひし歌などを少しほほゆがめてかたるも聞ゆ」
③ 芸能としての語物を演ずる。
※徒然草(1331頃)二二六「この行長入道、平家物語を作りて、生仏といひける盲目に教へて、かたらせけり」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)末の松山「其夜目盲法師の琵琶をならして奥浄るりと云ものをかたる」
④ いつも語り合っているように親しくする。親しくまじわる。かたらう。
御堂関白記‐長和二年(1013)正月一六日「春大夫年来間語人也」
浄瑠璃曾根崎心中(1703)「気が違ふたか徳兵衛、われと数年かたれ共一銭借った覚えもなし」
⑤ ある状態や性質などが、ある意味をおのずから表わし示す。
行人(1912‐13)〈夏目漱石友達「的(てっ)きり冗談だらうと思った。けれども彼の眼は其反対を語(カタ)ってゐた」
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉五「うすぎたない女給などを〈略〉どうあっても好きにはなれないところに、彼の育ちの語るヘンな優越感があった」

かたらい かたらひ【語】

〘名〙 (動詞「かたらう(語)」の連用形の名詞化)
① 気持や考えを口に出して相手に伝えること。また、相談すること。
※落窪(10C後)二「彼のかたらひせし少納言、交野の少将の文もて来たるに」
※続古今(1265)夏・二五二「たちばなの花散る里の郭公かたらひしつつ鳴かぬ日もなし〈大伴旅人〉」
② 夫婦の約束をすること。情交すること。男女の契り。
※源氏(1001‐14頃)松風「ただ、あだにうち見る人の、浅はかなるかたらひに見なれそなれて」
※虎明本狂言・夷大黒(室町末‐近世初)「いざなきいざなみのみこと、あまの岩くらのこけむしろにて、男女のかたらひをなし」
③ 説いて仲間に引き入れること。誘い。
※とりかへばや(12C後)上「宰相のかたらひにつかん事は、猶いとものし」
④ (鳥を擬人化して) 鳴くこと。また、その声。
※醍醐寺本遊仙窟康永三年点(1344)「朝(けさ)烏鵲の語(カタラヒ)を聞きつる」
⑤ 話し合うこと。したしく語り合うこと。「若い人たちのかたらい」
※千鳥(1906)〈鈴木三重吉〉「女は水よりも淡き二日の語らひに、片袖を形見に残して知らぬ間にゐなくなって了った」

ご【語】

〘名〙
① 言葉。言語。もの言い。
※山谷詩集鈔(1647)八「文に句をきるに、中に朱をつくるは、上から語のつづいた処ぞ」
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「独逸、仏蘭西の語を学びしことなり」 〔陶潜‐和郭主簿詩〕
② 成句。文句。ことわざ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※虎明本狂言・餌差法問(室町末‐近世初)「だるまのごにいはく、〈略〉地ごくに入事矢のごとし」 〔春秋穀梁伝‐僖公二年〕
③ 単語をいう。「一〇万語に及ぶ大作」
④ 数学で、有限個の記号の列。いくつかの記号があたえられた時、その中から有限個のものを(重複を許して)とり出して並べたものを、あたえられた記号をアルファベットとする語という。
⑤ 電子計算機の記憶装置が、演算装置や制御装置とやり取りする単位情報。一つの命令ないしは数値を表わす。

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デジタル大辞泉 「語」の意味・読み・例文・類語

ご【語】[漢字項目]

[音](呉) ギョ(漢) [訓]かたる かたらう ことば
学習漢字]2年
かたる。話す。「豪語私語耳語笑語独語妄語大言壮語
ことば。「語彙ごい語学語法隠語英語漢語季語敬語結語言語げんご・げんぎょ・ごんご古語口語国語死語熟語述語成語祖語造語俗語単語標語類語
物語。「源語勢語
[名のり]かた・こと・つぐ
[難読]私語ささめごと

ご【語】

単語。「むずかしいの意味を調べる」
口に出して言う言葉。「を続ける」「を遮る」
ことわざ。成句。特に、軸物に書いたもの。賛や詩に対していう。
[類語]言語言葉言辞言の葉

ぎょ【語】[漢字項目]

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語 (ご)

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【単語】より

…ことばの最も基本的な単位として,我々が日常的・直観的に思い浮かべるのが単語である。そして我々はこの単語を一定のルールに従って結合させ,より大きな単位であるを構成し,それを表出することによって,他人との間にコミュニケーションを成立させているのである。…

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