請来目録(読み)しょうらいもくろく

改訂新版 世界大百科事典 「請来目録」の意味・わかりやすい解説

請来目録 (しょうらいもくろく)

唐から日本へ請来した典籍,物品の目録であるが,特に平安時代初期に入唐した僧侶8人の目録をさして〈入唐八家請来目録〉という。最澄(804-805年在唐)には入唐中に作成した〈台州録〉と〈越州録〉がある。あわせて230部460巻の経典と道具が記載され,このうち〈越州録〉は原本が伝えられ,巻尾には明州刺史鄭審則の証明がある。空海(804-806年在唐)は青竜寺恵果らからの請来の経典類,曼荼羅図像,祖師像,法具と恵果の付嘱物を挙げ,その由来や意義を述べる。東寺に伝えられるものは1341年(興国2・暦応4)に叡山から寄進され,最澄が書写したものである。常暁(838-839年在唐)の求法は揚州に限られるが,経典61巻,図像や法具類が記される。円行(838-839年在唐)は空海の弟子で,長安青竜寺等に赴き聖教123巻,仏舎利,付嘱物,仏像,曼荼羅,法具を得ている。円仁(838-847年在唐)は長安,五台山,揚州の各地で求得した聖教類802巻,曼荼羅,図像,高僧像などを列記した総目録と,2種の揚州の目録を作成している。恵運(842-847年在唐)は温州,五台山,長安に赴き220巻の経典(そのうち76巻は新請来)をもたらしている。円珍(853-858年在唐)には長安,天台山で求得した772巻の経典,梵夾,法具などの〈国清寺求法目録〉,福州から台州の間に求得した経典,外書を記載した〈福州温州台州求得目録〉,福州開元寺で求得した156巻の経典,梵夾の目録,青竜寺で求得した経典115巻,曼荼羅,法具の目録で師法全の証明の加えられている〈青竜寺求法目録〉の4種のほか,これらを網羅して計1000巻,法具16種を記載した総目録の5通があり,いずれも原本が園城寺に伝えられる。宗叡(862-865年在唐)も青竜寺法全から受法し,143巻の聖教,図像,舎利,法具のほかに暦書,木版辞書等をその目録に記載し先人請来以外の新しいもののみを掲載したことを強調している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「請来目録」の意味・わかりやすい解説

請来目録
しょうらいもくろく

入唐,入宋した僧侶らが持ち帰った経典,経疏,仏画,仏像,仏具などの品目を帰朝後に朝廷に献上した目録。最澄空海,常暁,円行,円仁恵運円珍,宗叡の入唐八家の請来目録が著名。これらの目録以外にも経典,仏像,仏具などが存したことが遺品やのちの模写体によって知られ,また元慶9(885)年と延喜2(902)年に五大院安然が集大成した『諸阿闍梨真言密教部類惣録』には録外品目が記されている。これら目録によって当時の仏教美術の事情がわかる。ことに密教の儀軌や図像の研究に大いに貢献した。入宋した奝然俊芿の請来目録も著名。

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世界大百科事典(旧版)内の請来目録の言及

【儀軌】より

…その刊行はようやく江戸時代の中期になってから行われるようになった。そのうち,空海の《請来目録(しようらいもくろく)》に記されたものを〈録内儀軌〉,それ以外を〈録外儀軌〉と称するが,その大部分は《大正新脩大蔵経》に収められている。【岩松 浅夫】。…

※「請来目録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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