江戸中期の儒学者、神道(しんとう)家。本姓は大神(おおみわ)氏、名は重遠(しげとお)、丹三郎と称し、秦山はその号。土佐の郷士の家に生まれ、17歳のとき上洛(じょうらく)して山崎闇斎(やまざきあんさい)に入門。闇斎没後はその高弟浅見絅斎(あさみけいさい)に師事し、さらに天文暦学および神道を同門の渋川春海(しぶかわはるみ)に学び、儒学(朱子学)、神道、天文暦学などに頭角を現し、土佐南学(とさなんがく)をよく継承発展させた。この間、土佐藩(山内家)に儒官として仕えたが、藩内の事件に連坐(れんざ)し、45歳のとき蟄居(ちっきょ)を命ぜられ、死に至るまで許されなかった。秦山の学風は闇斎および絅斎を継承するものであったが、絅斎とは異なり徹底した日本主義を主張し、儒者流の中国崇拝および儒教の普遍主義を厳しく批判するところにその特徴がある。著書に『神代巻塩土伝(じんだいかんしおつちでん)』『中臣祓塩土伝(なかとみのはらいしおつちでん)』『土佐国式社考(とさのくにしきしゃこう)』『保建大記打聞(ほけんたいきうちぎき)』『新蘆面命(しんろめんめい)』(1704成立)『秦山集』(1728)など。明治期の軍人・政治家である谷干城(たにかんじょう)は、秦山の子孫にあたる。
[佐久間正 2016年6月20日]
(柴田篤)
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1663.3.11~1718.6.30
江戸前期の神道家・儒学者。本姓は大神(おおみわ)。幼名は小三次,名は重遠(しげとお),丹三郎・桜井清八とも称し,秦山は号。土佐国長岡郡別宮(べっく)八幡宮の神職の家に生まれる。1679年(延宝7)江戸に出て浅見絅斎(けいさい)・山崎闇斎(あんさい)に学び,渋川春海から天文・暦道を,ほかに伊勢神道や有職故実(ゆうそくこじつ)も学んだ。1706年(宝永3)藩命により「土佐国式社考」を著す。翌年,佐川支藩事件により蟄居(ちっきょ)に処されたが,その後も「神代巻塩土伝(しおつちでん)」「秦山集」などを著した。
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…江戸中期の儒学者,神道家。土佐の人。通称丹三郎,号は秦山(じんざん)。若くして上京,山崎闇斎,浅見絅斎について儒学,神道を学び,帰国後も江戸の渋川春海に入門して暦学を修めた。壮年,藩主に召されて儒員に加えられたが,のち罪を得て蟄居を命じられる。その間,国典を渉猟して学問を大成,〈国体の明徴〉を説いて後代に大きな影響を与えた。著書は《神代巻塩土伝(じんだいのまきしおつちでん)》《中臣祓塩土伝》《保建大記打聞》《土佐国式社考》《秦山集》があり,ほかに《俗説贅弁》《新蘆面命》等国史や律令格式をひろく渉猟した多数の書を編纂した。…
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[文化と維新]
土佐の朱子学は南学と呼ばれ,野中兼山,小倉三省,山崎闇斎らのグループが振興の先鞭をつけたが,兼山の失脚とともに当局に忌避されて〈南学四散〉を招いた。その後,京都に出た闇斎に谷秦山(谷重遠)が学んで復活し,史学,国学,暦学をあわせて〈谷家の学〉として伝えた。その土壌の上に武藤致和(むねかず)の《南路志》,鹿持(かもち)雅澄の《万葉集古義》などが生まれ,維新に連なる尊王思想が形成された。…
…高知県中東部,香美(かみ)郡の町。人口2万1951(1995)。物部川のつくる香長平野の北部を占め,北西部は山地。西縁は南国市に接する。町の中心は江戸前期,土佐藩執政野中兼山により開発され,在郷町として発展した山田野地町の地にあたり,物部川上流域や北方長岡郡からの物資の集散地であった。物部川左岸の神母ノ木(いげのき)から右岸小田島にかけて,兼山によって築造され下流域を灌漑した山田堰が今に残る。山地部は雨量が多く良材を産するが,平野部では温暖多雨の気候を生かして施設園芸が盛んで,野菜,タバコ,かんきつ類などを産し,米の二期作も行われている。…
※「谷秦山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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