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愛知県豊川市にある曹洞宗の円福山妙厳(みようごん)寺のことで,当寺にまつる鎮守稲荷社が信仰を集めて繁栄したことにより,豊川稲荷と呼ばれる。現在の豊川市はその門前町である。妙厳寺は,1441年(嘉吉1)に東海義易が開創した名刹で,1602年(慶長7)には朱印地45石を受けている。伝説によると,道元の弟子にあたる寒巌義尹(かんがんぎいん)が,康元年間(1256-57)に入宋(につそう)して帰朝の途次,狐に乗った霊神が船上に現れて,自分は吒枳尼真天(だきにしんてん)であり,仏法を守護すると告げた。東海義易は寒巌義尹の6代目の弟子にあたり,妙厳寺を創建したときに自刻の吒枳尼天像を鎮守神としてまつった。これが稲荷神で,今川義元,織田信長,豊臣秀吉,徳川家康ら武将の帰依を受けて栄えた。奥の院にある狐塚は,開山に仕えた平八郎という老翁で吒枳尼天の化身といわれる平八郎稲荷をまつっている。日本三大稲荷の一つとされ,10月22日に陰陽両度の祭典がある。東京赤坂の豊川稲荷はその別院で,大岡忠相が本寺から吒枳尼天を勧請して安置したのがはじまりである。
執筆者:中尾 尭
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愛知県豊川市豊川町にある曹洞(そうとう)宗の寺。円福山(えんぷくざん)と号する。本尊は千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)。正しくは妙厳寺(みょうごんじ)というが、山門の守護神として祀(まつ)られた吒枳尼天(だきにてん)(稲荷神の本地仏)によって通常は豊川稲荷の名で知られる。1441年(嘉吉1)寒巌義尹(かんがんぎいん)の6代の法系である東海義易(とうかいぎえき)を開祖として創建。曹洞宗三賽(さんさい)所の一つ。伝えるところによれば、寒巌義尹は康元(こうげん)年間(1256~57)中国に渡って帰朝のおり、船に白狐(しろぎつね)に乗った吒枳尼天が現れ、守護を約束したので、帰朝後その姿を刻み、護法の善神として祀ったという。吒枳尼天像が祀られてから江戸末期以降の稲荷信仰の流行とともに参詣(さんけい)が多く、とくに織田信長、豊臣(とよとみ)秀吉、今川義元(よしもと)、徳川家康などの武将の帰依(きえ)を受けた。境内には山門、仏殿、吒枳尼天堂、三重塔、専門道場などがあり、書院西には江戸初期の築山(つきやま)泉水庭園がある。寺宝の木造地蔵菩薩立像2躯(く)は国重要文化財。なお、東京都港区元赤坂の豊川稲荷は当寺の別院である。
[菅沼 晃]
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