豪信(読み)ごうしん

改訂新版 世界大百科事典 「豪信」の意味・わかりやすい解説

豪信 (ごうしん)

鎌倉~南北朝時代の似絵(にせえ)画家,天台宗僧侶。生没年不詳。藤原信実の子孫で藤原為信の子。似絵画家を輩出した家系掉尾を飾る画家。1320年(元応2)花園院の命で高山寺御影堂の正慶作伏見院像を写し,26年(嘉暦1)慈鎮影供のための画像を描く。また45年(興国6)には先年行われた《風雅和歌集》(花園院序,尊円清書)竟宴の図を描くために,それに参列した洞院公賢や民部卿公泰の面貌をその邸におもむいて写しているが,似絵作品の制作背景を知るうえで興味深い記録である。現存する作品に《花園天皇像》(長福寺)があり,これには花園院の自筆法印豪信が暦応1年(1338)9月に制作したことが記されている。図は似絵作品に共通する細線の引き重ねで面貌を描き,儀礼的な肖像画とは異なった写生風で軽やかな画像である。また宮内庁書陵部蔵《天皇影図巻》の末尾2体(花園,後醍醐)や《摂関影図巻》《大臣影図巻》は,巻末に付された尊円親王の筆と推定される奥書によれば豪信の制作であるという。尊円は花園院の異母弟に当たり,青蓮院門首や天台座主を務めたが,豪信は彼のかかわる法会にしばしば参列しており,また豪信の作画記録のいくつかに尊円が関与している。近時この尊円親王の肖像画(青蓮院旧蔵,ホノルル・アカデミー美術館)を豪信筆と推定する見解が提出されている。なお豪信以降,同じ家系の似絵画家として15世紀初頭に藤原為盛が知られるが作品は伝わらない。
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百科事典マイペディア 「豪信」の意味・わかりやすい解説

豪信【ごうしん】

鎌倉末期に活躍した画僧。名は未詳。豪信は法名か。出家して法印になる。父藤原為信から似絵(にせえ)の画才を受け継ぎ,本格的な鎌倉時代風似絵を描き得た最後の人となった。《花園天皇像》,《大臣摂関影》2巻が現存。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「豪信」の意味・わかりやすい解説

豪信
ごうしん

鎌倉時代末期から南北朝時代に活躍した画家。藤原隆信の5代の孫で,為信の子。家系は似絵 (にせえ) の名家で豪信はその最後を飾った。彼の筆に成る国宝『花園天皇像』 (長福寺) は,暦応1 (1338) 年天皇 42歳の姿を写したもの。天皇みずから「予の陋質,法印豪信故為信卿息の図す所なり」と銘を入れたように,細線を駆使してみごとにその表情をとらえた似絵の代表作。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「豪信」の解説

豪信 ごうしん

藤原豪信(ふじわらの-ごうしん)

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