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賄賂罪 わいろざい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

賄賂罪
わいろざい

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世界大百科事典 第2版の解説

わいろざい【賄賂罪】

特定の職務担当者に対して法律上許容されない利益を提供する罪である贈賄罪と,それを収受する罪である収賄罪とをあわせて賄賂罪という。職務行為がその担当者の私的な利益関心によって左右されることを防止するのが,これらの行為を処罰する趣旨である。狭義には刑法が,職権濫用罪と並ぶ瀆職罪の一種として197~198条で規定する公務員(7条1項)の職務に関する贈収賄罪をいう。国家公務員,地方公務員以外の職員についてこれを公務員とみなす法律の規定がある場合には,これらの職員の職務に関する贈収賄も刑法によって処罰されることになる。

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大辞林 第三版の解説

わいろざい【賄賂罪】

収賄罪と贈賄罪を併せていう語。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

賄賂罪
わいろざい

公的な職務を行う者が、その職務に関して、賄賂、すなわち不正な利益を受けたり、これらの職にある者に対し賄賂を贈る罪。本罪は国家の作用を害する罪であり、刑法第2編第25章の汚職の罪の一種。賄賂を受け取る収賄罪と、賄賂を贈る贈賄罪とに分かれる。現行憲法が規定するように、立法、行政、司法といった国政は国民の厳粛な信託に基づくものであり、これに携わる公務員は全体の奉仕者でなければならない。もし国政が賄賂の横行によりゆがめられるならば、国政に対する国民の信頼は失われ、不正や腐敗が社会全体に広がるであろう。そこで、洋の東西を問わず、金銭等の不正な利益により国政をゆがめたり、その疑惑を抱かせるような行為は強く戒められ、犯罪としても重く処罰される。[名和鐵郎]

社会的背景

ところが、政治が利権の配分を伴う以上、その利権を求めて群がったり、政治を利用して自己の利益を図ろうとする人々がつねに現れる。まさに政治には賄賂が付き物であるといっても過言ではない。とくに、日本の政界、財界、官界の構造的な癒着とも関連して、戦前・戦後を問わず、有力な政治家、財界人、官僚がかかわった大小さまざまな贈収賄事件は後を絶たない。それにもかかわらず、かつては、政界・財界・官界の癒着による構造的な疑獄事件においては、指揮権発動などにより、その真相があいまいにされ、各界の中枢にある人々の刑事責任は不問に付される場合がむしろ多かったといえる。このなかで、1976年(昭和51)2月に米上院の多国籍企業小委員会の公聴会で明らかとなったロッキード事件は、日本国内での金権政治批判の世論を背景として、ついに首相経験者をはじめ有力な政治家や経営者が賄賂罪により有罪判決を受けるという事態にまで発展した。しかし、日本の政治経済構造や日本特有の贈答文化とも関連して、その後も、リクルート事件、ゼネコン汚職など、民主主義の根幹を揺るがすような贈収賄事件が後を絶たない。[名和鐵郎]

本罪の歴史

日本では、奈良時代の大宝律令(たいほうりつりょう)(701)のなかに賄賂罪にあたる規定がすでにみられるが、明治初年の仮刑律、新律綱領、改定律例にもこの種の規定が存在する。1880年(明治13)に立法された近代的刑法典たる旧刑法には、「官吏涜職(とくしょく)ノ罪」のなかに賄賂罪の規定を設けていたが、後に述べるような受託収賄罪を規定するにとどまり、単純収賄罪や贈賄罪などの規定を欠いていた。そこで、1901年(明治34)に涜職法が公布されてその処罰範囲が拡大され、これを受けて1907年に公布された現行刑法は、第2編第25章において、「涜職ノ罪」(涜職罪。1995年の刑法改正で「汚職の罪」となる)の一つとして賄賂罪を規定していた。しかし、制定当初の刑法には、単純収賄罪と単純贈賄罪の二つの犯罪類型しか設けていなかったため、1941年(昭和16)の大改正により、受託収賄罪、事前収賄罪、第三者供賄罪、事後収賄罪が追加された。その後、1958年(昭和33)の改正で、斡旋収賄罪(あっせんしゅうわいざい)および斡旋贈賄罪が新設された。さらに、ロッキード事件を契機に、1980年の改正により各罪の法定刑が引き上げられている。[名和鐵郎]

各犯罪類型

現行刑法は、公務員の賄賂罪について次のとおり規定している(仲裁人の賄賂罪については、仲裁法に同様の規定がある)。
 単純収賄罪は、公務員がその職務に関して賄賂を収受、要求、約束する罪(5年以下の懲役)で、請託(一定の職務を行うよう依頼)を受けた場合は受託収賄罪(7年以下の懲役)にあたる(197条1項)。なお、これから公務員や仲裁人になろうとする者が請託を受けて上記の行為を行い、現にこの地位についた場合には、事前収賄罪(5年以下の懲役)にあたる(197条2項)。
 第三者供賄罪とは、公務員がその職務に関し請託を受けて、第三者に賄賂を供与させたり、その供与を要求、約束する罪であり、5年以下の懲役(197条の2)。
 加重収賄罪は、公務員が第197条、第197条の2の罪を犯し、よって不正の行為をしたり、相当の行為をしなかった場合や、職務上不正の行為をしたり、相当の行為をしなかったことに関して、賄賂を収受、要求、約束し、または第三者にこれを供与させたり、その供与を要求、約束する場合に成立し、1年以上の有期懲役(197条の3第1項・2項)。
 事後収賄罪は、公務員であった者が、その在職中、請託を受けて職務上不正の行為をし、または相当の行為をしなかったことに関して、賄賂を収受、要求、約束する罪であり、5年以下の懲役(197条の3第3項)。
 斡旋収賄罪は、公務員が、請託を受け、他の公務員をしてその職務上不正の行為をさせ、または相当の行為をさせないように斡旋すること、またはしたことの報酬として、賄賂を収受、要求、約束する罪であり、5年以下の懲役(197条の4)。
 贈賄罪は、第197条から第197条の4のすべての罪につき、賄賂を供与したり、申込、約束する罪であり、3年以下の懲役または250万円以下の罰金に処せられる(198条)。
 なお、犯人または情を知った第三者の収受した賄賂は没収され、その全部または一部を没収することができないときは、その価額を追徴される(197条の5)。[名和鐵郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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