(読み)まかない

精選版 日本国語大辞典 「賄」の意味・読み・例文・類語

まか‐ない ‥なひ【賄】

〘名〙 (動詞「まかなう(賄)」の連用形の名詞化)
① 貴人の身辺などをととのえ、世話すること。
※枕(10C終)一八四「上臈御まかなひにさぶらひ給ひけるままに、ちかうゐ給へり」
食事や宴などの用意をすること。また、その人。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「そのすまひの日、〈略〉あしたの御まかなひには仁寿殿女御、ひるのまかなひには〈略〉承香殿の女御」
給仕をすること。また、その人。陪膳
※枕(10C終)一〇四「みぐしあげまゐりて、蔵人ども、御まかなひの髪あげてまゐらするほどは」
武家の職制で、膳所および奥・表台所を支配し、主に食事を供給する役。
随筆戴恩記(1644頃)上「恩斎と申ものまかなひの人、時々しかられければ」
⑤ 間に合わせること。とりつくろい。
※浮世草子・世間胸算用(1692)三「諸事を春の事とてのばし、当分のまかなひばかりにくれければ」
⑥ 費用を出すこと。また、家計などのきりもりをすること。出費
※本福寺跡書(1560頃)妙専尼懐妊夢相之事「公儀・国方のまかない、家別・屋別、ときならぬ出銭・くくり事、何しらずになりて」
下宿や寮などで出す食事。また、それを調理する人。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二「早くいかないと、賄(マカナヒ)の食を喰ひ損ふぜ」
江戸時代品川遊里で、やり手のこと。
黄表紙・京伝憂世之酔醒(1790)「爰ではやりての事をまかないと申ます」

まか‐な・う ‥なふ【賄】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 用意をととのえる。支度する。準備する。まち設ける。
古事記(712)上「天の香山の天の波波迦を取りて〈略〉、占合ひ麻迦那波(マカナハ)しめて〈麻より下の四字は音を以ゐよ〉」
② 食事などをととのえて与える。饗応する。
※枕(10C終)九九「さらば、とりおろして。例の、はひぶしにならはせ給へるおまへたちなればとて、まかなひさわぐ程に」
③ とりはからって必要な用を果たす。ある範囲物事をとりしきる。〔文明本節用集(室町中)〕
雑兵物語(1683頃)上「梅干は在陣中一つでまかなへども、小椒粒は在陣中日数程は入べいぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「賄」の意味・読み・例文・類語

まい‐ない〔まひなひ〕【賄/賂】

神への捧げ物や人に贈る金品。また、賄賂わいろをいう。
[類語]賄賂袖の下裏金鼻薬リベートコミッション贈賄収賄実弾

わい【賄】[漢字項目]

常用漢字] [音]ワイ(慣) [訓]まかなう まいなう まいない
便宜を得るため不正に贈る金品。「賄賂わいろ収賄贈賄

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android