政治倫理の確立を期し、民主政治の健全な発達に資するため、政治家の資産などを公開し、国民の不断の監視と批判のもとに置く制度を定めた法律。正式名称は「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」。平成4年法律第100号。国会議員の土地、建物、預金、自動車、美術工芸品、ゴルフ会員権、貸付金などの資産や借入金、所得の金額などを公開する制度を定めているほか、都道府県、政令指定都市の議会議員、知事、市町村長、特別区の区長についても国会議員の制度に準じて条例で資産公開の制度を定めるものとしている。1992年(平成4)12月に成立し、1993年6月に全国会議員の資産などの初の公開が行われた。知事や都道府県議などの資産公開についても1995年暮れまでに条例が制定され、1996年から各地で始まっている。
政治倫理の確立のための手段として、欧米諸国では政治家の資産を公開する制度が整備されているが、日本においては、1984年(昭和59)の第二次中曽根康弘(なかそねやすひろ)内閣のときから各大臣申し合わせに基づいて全閣僚(その後、政務次官、配偶者などに範囲を拡大)の資産の公開が実施された。しかし、政治不祥事が相次いで起こり、政治に対する信頼の回復のためには、国会議員、地方議会の議員、首長は資産を公開することが必要とされ、緊急の政治改革の一つとしてこの法律が制定された。閣僚の資産公開は配偶者などの資産も公開の対象としているが、この法律では政治家本人の資産に限っており、罰則もなく、不十分だとする声もある。
[浅野一郎・浅野善治]
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