売春を目的とした特殊飲食店街の別称。警察がこの地域を地図に赤線で囲って示したところからこの名称がある。第二次世界大戦後の1946年(昭和21)1月、GHQ(連合国最高司令部)の指令により、日本における管理売春の公娼(こうしょう)制度は廃止されたが、戦後社会の混乱と性風俗の悪化を恐れ、特定の地域を限って私娼による慰安所を設けて営業することが許された。これらの店のほとんどは、公娼を扱っていた業者が営み、形式的に飲食物を置いたが、内容はもっぱら売春であった。ストリート・ガール(街娼)は取締りの対象になったのに対し、これは風俗営業として認められた。公娼は身代金、前借金などの名目で拘束されたが、私娼はあくまで本人の自由意志によるものとし、慰安料金の配分も娼婦・業者折半か、または娼婦60%・業者40%程度を約束して行われた。東京には吉原、新宿、玉の井、鳩の街(はとのまち)、洲崎(すざき)、武蔵(むさし)新田など13の赤線区域があった。特殊飲食店街吉原は新吉原特飲街として300軒の業者、1200人の娼婦がいた。全国のおもな都市や温泉地などの赤線区域には6万人を超す娼婦がいたといわれる。また飲食店の営業許可だけで酌婦がひそかに売春をしたり、あるいは旅館を装って街娼を出入りさせる裏口売春街は、フランスの例に倣って特別地区として地図に青線で囲ったので青線区域とよばれた。そのほか東京の立川など米軍基地周辺には白線(ぱいせん)区域、黒線区域とよばれる外国兵相手の売春街もあった。これらの売春街は風俗営業取締法、労働基準法、売春取締条例、旅館業法などにかかわりをもちながら黙認されていたが、1956年(昭和31)5月24日売春防止法が公布、翌1957年4月1日同法の実施により姿を消した。
[佐藤農人]
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