蹇蹇録(読み)ケンケンロク

デジタル大辞泉 「蹇蹇録」の意味・読み・例文・類語

けんけんろく【蹇蹇録】

外交記録。陸奥宗光著。明治28年(1895)成立。昭和4年(1929)刊。朝鮮半島南部で起こった甲午こうご農民戦争から日清戦争下関条約三国干渉に至るまでを、外相であった著者立場から記述したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「蹇蹇録」の意味・読み・例文・類語

けんけんろく【蹇蹇録】

  1. 外交記録。陸奥宗光著。明治二八年(一八九五)成立。明治二七年六月の朝鮮東学党の乱から、日清戦争、下関講和条約批准、三国干渉、遼東半島還付に至るまでの経緯を、外務大臣の職にあった著者の立場から述べたもの。書名は「蹇蹇匪躬(けんけんひきゅう)」による。

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改訂新版 世界大百科事典 「蹇蹇録」の意味・わかりやすい解説

蹇蹇録 (けんけんろく)

陸奥(むつ)宗光の著書。1895年10月,療養中の大磯速記者に口述し,そののち推敲したものであるが,外務省の機密文書を引用した外交秘録であることから,当時一般に流布されることなく,秘密出版として僅少部数が作られた。1929年陸奥広吉の編集した《伯爵陸奥宗光遺稿》に外務当局の許可を得て収録され,33年岩波文庫に所収された。その内容は,1894年の朝鮮東学党の乱(甲午農民戦争)を利用した軍隊の派遣,日清両国の外交交渉,朝鮮内政改革,欧米各国との交渉,日英条約改正の成功,日清講和の経緯,三国干渉など21章からなる。この間,外務大臣として全過程にかかわっていた著者による日清戦争中の外交記録として,当時の国際情勢,外交交渉の顚末を詳細に知ることができ,信頼度も高い。条約改正が最優先されていた日本の外交事情にあって,陸奥の深謀ある外交手腕には見るべきものもあるが,当事者みずからが記しているということから,自己の業績を賞揚しすぎている感はある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蹇蹇録」の意味・わかりやすい解説

蹇蹇録
けんけんろく

陸奥宗光(むつむねみつ)著の日清(にっしん)戦争外交秘録。外務大臣として日清戦争外交の衝にあたった陸奥は、戦後、まず『露独仏三国干渉要概』を執筆、さらに病臥(びょうが)、神奈川県大磯(おおいそ)に静養中、「東学党の乱」から「露、独、仏三国の干渉」まで21章に及ぶ日清戦争全過程の外交政略概要を起草、1896年(明治29)外務省で印刷。1929年(昭和4)公刊されるまで秘本とした。「蹇蹇」とは『易経(えききょう)』蹇卦(けんか)からとられた文字で、困難に屈せず君に忠貞であることをいう。国会図書館憲政資料室「陸奥宗光関係文書」には、墨書草稿、鼇頭(ごうとう)書込原本などがある。

[中塚 明]

『陸奥宗光著『蹇蹇録』(岩波文庫)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蹇蹇録」の解説

蹇蹇録
けんけんろく

明治期の外相陸奥宗光の日清戦争覚書。蹇蹇とは忠義を尽くす意。講和直後の1895年(明治28)に著された。朝鮮をめぐる日清対立,東学党の乱(甲午(こうご)農民戦争)と両国の派兵,朝鮮の内政改革の提案,欧米との関係,開戦と条約改正,戦時外交,講和談判,三国干渉などにつき,公文の背後に隠された自身の政略と諸外国のそれへの観察を鋭利・率直に記す。第一級の史料であると同時に,リアリストの戦争外交論の古典として知られる。「岩波文庫」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「蹇蹇録」の解説

蹇蹇録
けんけんろく

明治中期,外務大臣として日清戦争前後の外交の衝にあたった陸奥宗光の回顧録
甲午農民戦争,日英通商航海条約の改正,三国干渉,下関条約などについて詳細に記録されている。当時の外交を知るための貴重な史料。

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