辰巳之園(読み)タツミノソノ

デジタル大辞泉 「辰巳之園」の意味・読み・例文・類語

たつみのその【辰巳之園】

洒落本。1冊。夢中散人寝言先生むちゅうさんじんねごとせんせい作。明和7年(1770)刊。江戸の遊里深川を描いた最初の洒落本。

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精選版 日本国語大辞典 「辰巳之園」の意味・読み・例文・類語

たつみのその【辰巳之園】

  1. 洒落本。一冊。夢中散人寝言先生作。明和七年(一七七〇)刊。書名は「たつみのえん」とも読ませる。半可通の侍如雷と田舎侍新五左衛門が深川仲町茶屋に遊ぶが、如雷は相方お長に袖にされ、お長は通人志厚の待つ横座敷へ逃げこむ。深川の流行ことばや隠語を解説した付録が付く。深川遊びを描いた最初の洒落本。

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改訂新版 世界大百科事典 「辰巳之園」の意味・わかりやすい解説

辰巳之園 (たつみのその)

洒落本。夢中散人(むちゆうさんじん)寝言(ねごと)先生作。1770年(明和7)刊。1冊。同年刊吉原に取材した《遊子方言》の影響のもとに,深川の岡場所に取材した最初の作品。通人気取りの武士如雷(じよらい)が,同家中の田舎侍新五左衛門を伴って船で深川に向かう。船中さかんに知ったかぶりを並べるが,仲町(なかちよう)の小花屋(おばなや)にあがって遊ぶうちに,女郎お長に冷遇されて立腹し,ついに半可通の正体をばくろする。いっぽうお長を相手に通人らしい志厚の遊びぶりを描いている。吉原に対立する岡場所深川の風土色や流行,とくに独特の通言つうげん)などを精細に描写し,黄表紙金々先生栄花夢》(1775)の成立にも大きな影響を与えた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「辰巳之園」の意味・わかりやすい解説

辰巳之園
たつみのその

洒落本(しゃれぼん)。1770年(明和7)刊。夢中散人寝言(むちゅうさんじんねごと)先生作。吉原と並ぶ江戸の代表的遊里深川を描写した最初の洒落本。半可通の武士如雷(じょらい)は、通人ぶりを盛んに吹聴しながら、田舎(いなか)侍新五左衛門を案内して深川八幡(はちまん)前の小花屋(おばなや)に登楼するが、そこで半可通をすっかり暴露される。同じく深川に遊ぶ通客志厚(しこう)と対照させて描写は進み、深川の通言、流行語の説明を加えるなど、後の洒落本の主流となる「うがち」の要素を多分に備えている。なお洒落本に限らず、黄表紙の嚆矢(こうし)『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』(1775)の成立にも大きな影響を与えている。

[棚橋正博]

『水野稔校注『日本古典文学大系59 黄表紙・洒落本集』(1958・岩波書店)』『水野稔他編『洒落本大成4』(1979・中央公論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「辰巳之園」の意味・わかりやすい解説

辰巳之園
たつみのその

洒落本。夢中散人寝言先生作。1冊。明和7 (1770) 年刊。「 (つう) 」と「うがち」という美意識を中心として写実的短編小説の形をとった,初期の本格的洒落本の一つ。江戸深川を舞台とした最初の作品で,如雷という半可通の武士が新五左衛門というやぼな勤番侍を連れて深川に遊び,「通」をひけらかすが,次第に馬脚を現して半可通ぶりを暴露する話。巻末に「通言」を記す。

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