鎌倉初期の歌論書。藤原定家(ていか)著。頓阿(とんあ)の『井蛙抄(せいあしょう)』での引用によると、後鳥羽院(ごとばいん)の皇子梶井宮(かじいのみや)尊快法親王に献進したものと考えられ、1221年(承久3)の承久(じょうきゅう)の乱後の成立と推定される。漢文体(後人の仮名文としたものもある)の、作歌の原理と方法とについて説いた部分が主で、「詞(ことば)」「風体(ふうてい)」「景気(けいき)」に分けて、それぞれ古典の学び方を示している点は本書独自の内容である。それに「秀歌体大略(しゅうかのていのたいりゃく)」と題する83首の八代集抄出歌が付載され、「風体」の優れた例を示す。内容上近似するものに『近代秀歌』改撰(かいせん)本がある。
[藤平春男]
『久松潜一他校注『日本古典文学大系65 歌論集・能楽論集』(1961・岩波書店)』▽『藤平春男他校注・訳『日本古典文学全集50 歌論集』(1975・小学館)』
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