普通、上空へ行くほど低くなっていく気温が、逆に上昇していく気層。大気中では、気温は普通、上空であればあるほど減少する。その値は100メートルにつき0.6~1.0℃といわれている。しかし、暖かい空気が冷たい空気の上に流れ込んできたとき、すなわち、前線が生じたときや沈降性の気流が生じたときなど、あるいは地面付近で放射冷却が生じたときには、気温の逆転現象がおこり、空気は上空に行くほど温度が上昇する。このときの逆転が生じている気層が逆転層である。したがって逆転層には、上空の逆転層および接地逆転層の2種類がある。
接地逆転層の中では気層が静力学的に安定しているため、都会などではこの層の下部に煙や煤煙(ばいえん)などが沈滞してスモッグが発生しやすい。上空の逆転層の場合も、この中では気層は安定であるが、その下方の気層は不安定のため、汚染物質などは拡散しやすく、また、上方に逆転層があると、それより上空への汚染物質などの拡散はしにくくなるので、この逆転層をリッドlid(蓋(ふた))という。リッドが低い場合には、その下の混合層内の汚染濃度は高くなる。また逆転層の存在の仕方と煙突高度によって、煙の拡散する形はさまざまに変化する。
この逆転層が解消するときにフューミゲーションfumigation(いぶし現象)という現象がおこり、地上の汚染濃度が一時的に増大することがある。
[内田英治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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※「逆転層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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