日本大百科全書(ニッポニカ) 「連結納税制度」の意味・わかりやすい解説
連結納税制度
れんけつのうぜいせいど
親会社と子会社などの企業グループを一つの企業のようにみなし、法人税を課税する制度。早くから欧米で定着していたが、日本は2002年(平成14)4月から導入した。グループ内企業の黒字と赤字を相殺でき、一般的に課税所得を圧縮する効果がある。研究開発や外国税額控除などの税優遇枠をグループ会社間で共有できる利点もある。税制面でM&A、新規事業への進出、赤字事業の分社化など機動的な組織再編を促し、企業の国際競争力を高める効果がある。
1917年に租税回避を目的に、アメリカで導入されたのが始まりとされる。親会社と子会社の損益を合算して税額を計算する所得通算型(アメリカ、フランスなど)と、黒字会社から赤字会社へ利益を移転して個別会社ごとに納税する損益振替型(イギリス、ドイツなど)の大きく分けて2種類があり、日本は所得通算型を導入した。連結対象は国内の100%出資会社のみで、内外の子会社を幅広く対象とする連結会計とは異なる。従来の単体納税制度か連結納税制度かを選択できるが、連結納税を選ぶと100%子会社はすべて強制的に所得通算の対象となる。ただグループ内の1社の納税額ミスで、グループ会社すべての数字を修正せねばならず、税務当局も本社と子会社のある地域の全税務署が連携調査する必要があるなど事務負担が大きかった。このため2020年度(令和2)の税制改正で、グループ各社がそれぞれ申告・納税する「グループ通算制度」に改め、ミスが起きた会社のみの修正で済むように見直す。2022年から変更するが、赤字と黒字の相殺による税負担の軽減や、グループ会社間での税優遇枠の共有などの利点は変えない。
1997年(平成9)純粋持株会社の解禁を手始めに、日本政府は株式交換・移転制度の適用、会社分割制度の導入など欧米並みのグループ経営に向けた施策を打ち出してきた。連結納税制度を導入する企業数は2018年6月末時点で、親会社1800社超、子会社1万3400社超あり、上場企業の導入は約600社と全体の2割程度(欧米では6割程度)である。
[矢野 武 2020年5月19日]