過マンガン酸塩滴定(読み)かまんがんさんえんてきてい(英語表記)permanganate titration

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

過マンガン酸塩滴定
かまんがんさんえんてきてい
permanganate titration

過マンガン酸カリウムKMnO4の標準溶液(カメレオン液ともいう)を用いる酸化還元滴定。過マンガン酸カリウム滴定ともいう。[成澤芳男]

標準溶液と標定

過マンガン酸カリウムは容量分析用標準試薬に含まれていないので、KMnO4の標準溶液を調製するには通常以下のようにする。すなわち、過マンガン酸カリウムの試薬を約3.2グラム計り取り、1リットルのビーカーに入れ、金網上で加熱沸騰させる。これにより使用した水中の微量有機物等の還元性物質が酸化され、微量の二酸化マンガンが生成する。冷却後、試薬に含まれるごく微量の二酸化マンガンも含めて、グラスフィルターで全二酸化マンガンを除去する。この溶液を褐色の1リットルの試薬瓶に入れて冷暗所に保存すれば、通常の過マンガン酸塩滴定(酸性溶液中で行う滴定)用として用いる約0.1規定の溶液が得られる。標準溶液として用いるにはシュウ酸ナトリウムNa2C2O4(一次標準)の標準溶液で滴定して過マンガン酸カリウムの濃度を決定する。この操作を標定standardizationといい、このようにして得られた標準溶液を二次標準溶液という。容量分析では試料を直接天秤(てんびん)で計り取ってメスフラスコを用いて標準溶液を調製できる物質を標準試薬といって、11種類が知られている。シュウ酸ナトリウムのほかに塩化ナトリウムNaClなどがある。このほかpHの標準試薬とか工業分析などの目的に応じた標準物質が詳しく定められている。[成澤芳男]

半電池反応

酸性溶液中で過マンガン酸イオンは式(1)のように反応する。
  (1)MnO4-+8H++5e-―→Mn2++4H2O
    E°=+1.51V
 ここでE°は標準還元電位(標準酸化還元電位)であり、水素の反応
  2H++2e-―→H2
   E°=0.000V
を基準にしている。この数値が大きいほど酸化剤として強いことを示す。鉄()塩、過酸化水素、シュウ酸などの還元剤と酸化還元反応を行うので、これらの物質を滴定によって定量することができる。鉄()塩、過酸化水素、シュウ酸の半電池反応と標準還元電位を示す。ここで式の中にある(aq.)とか(g)という記号は、水溶液aqueousとか気体gaseousを示す。
  鉄()塩
   Fe3++e-―→Fe2+
   E°=+0.77V
  過酸化水素
   O2+2H++2e-―→H2O2(aq.)
   E°=+0.68V
  シュウ酸
   2CO2(g)+2H++2e-―→H2C2O4(aq.)
   E°=-0.49V
 なお、典型的なガルバニ電池であるダニエル電池について説明する。この電池は、金属亜鉛棒を亜鉛()イオンの水溶液に挿入した糸と金属銅版を銅()イオンの水溶液に挿入した糸との組み合わせからなっており、両溶液の間はそれらが混ざり合わないように多孔質隔膜あるいは塩橋で仕切られていて、電気的には通ずるように構成されている。この電池は以下の反応がおこる。
  負極(-極)
   Zn―→Zn2++2e-(酸化反応)
  正極(+極)
   Cu2++2e-―→Cu(還元反応)
  電池全体
   Zn+Cu2+―→Zn2++Cu
 この正極と負極でおこる反応を半電池反応という。[成澤芳男]

酸化還元反応

鉄()塩との反応は次の式(2)で示される。終点の判定は、過剰の過マンガン酸イオンの赤紫色が消えなくなったときをもってする。したがって酸性溶液中における過マンガン酸イオンは1モルが5規定に相当する。
  (2)MnO4-+5Fe2++8H+―→
    Mn2++5Fe3++4H2O
 過酸化水素やシュウ酸との反応は次のように表される。
  2MnO4-+5H2O2+6H+―→
   2Mn2++10O2+8H2O
  2MnO4-+5H2C2O4+6H+―→
   2Mn2++10CO2+8H2O
 過マンガン酸カリウムの標準還元電位E°=+1.51Vから、それぞれの標準還元電位を差し引くと
  鉄()塩
   E°=(+1.51V)-(+0.77V)=+0.74V
  過酸化水素
   E°=(+1.51V)-(+0.68V)=+0.83V
  シュウ酸
   E°=(+1.51V)-(-0.49V)=+2.00V
となる。これらの値が正であるから、酸化還元反応は自発的に進む。(1)式の半電池反応の式から鉄()塩の半電池反応の式を5倍して引くと
  MnO4--5Fe3++8H+―→
   Mn2+-5Fe2++4H2O
となり、マイナス(-)がついている項を移行すれば(2)式が得られる。
 中性ないしアルカリ性では(3)式と(4)式の反応がおこる。
  (3)MnO4-+e-―→MnO42-
    E°=+0.56V
  (4)MnO42-+2H2O+3e-―→MnO2+4OH-
    E°=+0.60V
 アルカリ性ではシュウ酸イオンは次のような半電池反応で表される。
  2CO2(g)+2e-―→C2O42-(aq.)
 過マンガン酸カリウムが(4)式の反応でシュウ酸イオンC2O42-と反応すると(5)式のようになるので、1モルは3規定に相当する。
  (5)2MnO4-+3C2O42-+4H2O―→
    2MnO2+6CO2+8OH-
 ここで二酸化炭素CO2が還元されてシュウ酸イオンを生成する半電池反応の標準還元電位は与えられていないが、先に示したE°=-0.49Vが適用できるとすると、標準起電力は0.60-(-0.49)=1.09Vとなり、正の値を取るから(5)式の酸化還元反応は自発的に進む。
 このように、過マンガン酸カリウム標準溶液は滴定の方法によって1モルが5規定となったり、3規定となったりするので、使用にあたってはどのように調製されたか確認する必要がある。[成澤芳男]
『日本分析化学会編『分析化学便覧』改訂3版(1981・丸善) ▽電気化学協会編『先端電気化学』(1994・丸善)』

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