広義には,ある物質が生体内に入った場合,生体がその物質に対して〈異常な反応(質的にも量的にも)〉を起こす場合をいい,狭義には免疫学的機序によると思われる異常反応をいう。一般にいう過敏症は,狭義の場合を指すことが多い。質的な異常反応は大きく次の三つに区別することができる。すなわち,(1)薬物に対する中毒作用,(2)薬理作用として普通では反応しない少量の物質(薬物など)に対して反応を示すこと,(3)免疫学的にアレルギーとしてあらわれてくる場合である。このうち,薬理作用としての過敏症は,ある薬理作用が非常に強く出る場合(微量な安定剤で強い眠気があらわれる,または常用量で身体の安定性を保っていられなくなることなど)をいう。
一般にいわれている免疫学的な過敏症は,生体内で抗原(薬物でも,食物中の特殊な成分や花粉などでもよい)に対して抗体が結合し,抗原・抗体結合物ができて,正常な生体ではあらわれない異常反応(アレルギー)を起こす場合をいい,この場合,抗原と抗体とはそれぞれ特異的に反応(A抗原には抗A抗体)するが,主として抗体(免疫グロブリン)の性質,補体の関与の有無などによって4型(ときに5型)に分けられる(これらの詳細については〈アレルギー〉の項目を参照されたい)。薬物過敏症は,薬剤が抗原として働く免疫学的機序によるものと薬理作用によるものとを区別しがたいことが多い。過敏症をあらわす生体側には,その抗原に対する抗体を産生しやすいこと,抗原抗体反応によって出現してきたもの(化学伝達物質など)に対する反応性が亢進していることが前提条件となっているが,個人差があり,これには遺伝的因子が関与している可能性が強い。
過敏症による代表的疾患としては,気管支喘息(ぜんそく),湿疹,接触性皮膚炎,アレルギー性鼻炎などがあるが,これ以外にも多くの疾患が関与していると思われる。
執筆者:広瀬 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
語義的には、生体の刺激に対する感受性が亢進(こうしん)し、正常な個体ではなんらの反応も示さない弱い刺激に対して特定の個体が示す異常に強い反応性を意味するが、通常、アレルギーと同義語として用いられる。たとえば、即時型アレルギーを即時型過敏症、遅延型アレルギーを遅延型過敏症のように用いる。
[高橋昭三]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…被投与者の体質上の異常が根底にあって発生する場合が多い。19世紀末にE.vonベーリングが,動物に細菌の毒素をくりかえし注射していくと,ときに致死量以下のごく少量の毒素の注射で激しいショック症状をおこすことを観察し,それは動物がその毒素に対して過敏になっているためと考え,その状態をhypersensitivity(過敏状態。ドイツ語ではÜberempfindlichkeit)と名づけた。…
※「過敏症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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