適応戦略(読み)てきおうせんりゃく(英語表記)adaptation strategy

知恵蔵の解説

適応戦略

生物の適応的な生活様式や行動を比喩的に表現する社会生物学用語。小型で多数の子を産み、新しい生息場所へ進出しやすいことをr戦略、大型で少数の子しか産まず、変化の乏しい環境にすむことをK戦略というのはその一例最適戦略ゲーム理論から借用した概念で、特定の目的を達成するために最も効率的なやり方のこと。たとえば最適採餌戦略を餌の分布の仕方などの要因から算出する。進化的に安定な戦略(ESS)は、集団のほとんどの成員がその戦略を採っていれば、それ以外の戦略を採るものが入り込んでも繁栄できないような戦略のことで、個々の戦略がもたらす進化的な利益・不利益のシミュレーションから導き出すことができる。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

適応戦略【てきおうせんりゃく】

生物の形態や生態の違いを社会生物学的な観点から解釈した表現。それぞれの生物は自らの子孫の存続のためにそのような戦略を採用しているという考えに立つ。例えば,大きな卵を小数産んで大事に育てる動物と小さな卵を大量に産みっぱなしにする動物がいるが,この選択は一般に,その動物が置かれた条件によって決まる。すなわち,産卵・保育に要する総費用(コスト)と,得られる利益(生き残る子の数)との収支が問題になるので,適切な数学的モデルによって最適解を得ることができる。こうして得られたものを最適戦略または進化的に安全な戦略(evolutionary stable strategy。ESSと略記)と呼ぶ。最適戦略は一つの種で一つとは限らない。例えばなわばり雄となって雌を独占する生き方と,周辺でなわばり雄の目を盗んで雌と交尾する生き方は共存でき,2つの戦略の比率は理論的に算出可能である。このような場合には混合ESSと呼ぶ。
→関連項目社会生物学

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世界大百科事典 第2版の解説

てきおうせんりゃく【適応戦略 adaptive strategy】

生物の形質すなわち形態,生理,産子数,卵サイズ,性比,行動などは種ごとにさまざまだが,こうした違いは,生物の種(または個体群)が自然淘汰のなかで,ありうるいくつかの戦略のうちのどれかを選択するという課題に着目し,そのうち最適な戦略を採用してきた結果だと見ることができる。このような見方では生物の形質は一つの適応戦略と理解され,その研究にはゲーム理論最適制御理論のような数学的方法が援用される。そのさい何が最適かをきめるものさしは,その遺伝子型の個体がどれだけ成功した子孫を残せるかであって,これを繁殖成功度reproductive successないし適応度fitnessと呼ぶ。

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世界大百科事典内の適応戦略の言及

【密度効果】より

…一般にロジスティック増加をする個体群においては,最大の増加率を実現する最適密度が存在し,ロジスティック曲線の変曲点がそれにあたる。 密度効果は,生物種の適応戦略を考えるうえでも重要である。出現は不規則で短命なのだが豊かな資源を利用する種は,高い増殖率と分散能力を備える必要がある。…

※「適応戦略」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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