2種類以上の非連続的な変異体または遺伝子型が、同じ集団のなかに突然変異によって保たれるよりも、高い頻度で共存している状態をいう。
この多型の保たれる原因については、次のような説明がされている。
(1)ヘテロ接合体(異型接合体)がホモ接合体(同型接合体)よりも自然選択に有利であるためにおこる平衡多型現象による。
(2)多型のうちの一つまたは複数の変異体が、一定の頻度以下になったとき自然選択に有利になるためにおこる。
(3)集団が生息する環境が、場所や時間で異なり、それぞれの環境に適応した遺伝子型が違うためにおこる。
自然界でみられる例に、ナミテントウ(テントウムシ)の斑紋(はんもん)の多型があり、これには同一遺伝子座にある少なくとも4種の遺伝子(複対立遺伝子)が関係している。ショウジョウバエの逆位その他をもった染色体が、染色体多型の状態で維持されていることもよく知られている。また、ヒトの血液型もよく知られた遺伝的多型の例である。興味ある説明のされている例としては、アフリカでみられるヒトの鎌状赤血球貧血症(かまじょうせっけっきゅうひんけつしょう)がある。この赤血球の異常は1個の潜性遺伝子によっておこり、この遺伝子のホモ接合体は赤血球の異常(鎌状赤血球)をおこし致死的であるにもかかわらず、鎌状赤血球遺伝子がかなり高い頻度で集団のなかに維持されている。その理由は、ヘテロ接合体が正常遺伝子のホモ接合体に比べて、マラリアの1種に対して抵抗性が高いためであるとされている。遺伝的多型は、集団のなかに遺伝的な変異を保有する働きをし、それによって集団が環境の変化に対応できる能力を高めるので、適応に有利な現象であると考えられている。
[井山審也]
…またアゲハチョウやジャノメチョウなどでは季節によって違った斑紋をもつものがあるが,これは季節的多型seasonal polymorphismと呼ばれる。ヒトのABO血液型の場合のように,多型的な形質が遺伝的なものである場合は遺伝的多型genetic polymorphismと総称される。 ある集団を考えると,毎代突然変異により変り者が生じるから,厳密にいえば2種類以上の遺伝子型がほとんどつねに存在することになるが,変異体が低い頻度でしか存在していない場合には遺伝的多型と呼ばない。…
※「遺伝的多型」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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