相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた配偶者の居住を保護するために認められる権利。2018年(平成30)の相続法改正によって新設された(2020年4月1日施行)。大別すると、遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限り認められる「配偶者短期居住権」(民法1037条以下)と、配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができる「配偶者居住権」(同法1028条以下)とに分けられる。
[野澤正充 2019年7月19日]
上記の改正前においても、最高裁判所の判例(最高裁判所平成8年12月17日判決、民集50巻10号2778頁)によって、被相続人の所有する建物に同居していた配偶者には、遺産分割までの間は、引き続き、その建物を無償で使用することが認められていた。ただし、その理由は、「特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される」というものであった。それゆえ、被相続人が第三者に居住建物を遺贈した場合や、被相続人が反対の意思を表示した場合には、無償で使用させる旨の合意(使用貸借)が「推認」されず、配偶者の居住が保護されないおそれがあった。
そこで、相続法改正により、配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(居住建物)に無償で住んでいた場合には、被相続人の意思にかかわらず、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得するものとされた(同法1037条1項)。
(1)配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日までの間(ただし、最低6か月間は保障)(同法1037条1項1号)。
(2)居住建物が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合には居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6か月(同法1037条1項2号)。
この結果、少なくとも、最低6か月間は、配偶者の居住が保護されることになる。
[野澤正充 2019年7月19日]
民法第1028条に定められた「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身または一定期間、配偶者にその使用または収益を認めることを内容とする法定の権利である。この権利も、上記の相続法改正によって新たに認められたもので、より具体的には、遺産分割における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができる(同法1028条1項1号)ほか、被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができる(同法1028条1項2号)。
この配偶者居住権のメリットは、配偶者が自宅での居住を継続しながら、その他の相続財産も取得できることにある。たとえば、相続人が妻と子であり、遺産が自宅(2000万円)と預貯金(3000万円)だった場合には、上記の相続法改正前であれば、妻と子の相続分は1(2500万円):1(2500万円)であるため、妻が自宅(2000万円)を取得すると、預貯金は500万円しか取得できなかった。そうすると、自宅での居住はできるが、生活費が不足するおそれがある。しかし、配偶者居住権を認めると、自宅は、配偶者居住権とその負担のついた所有権(居住権のない所有権)とに区別される。そして、仮に、配偶者居住権の負担のついた所有権を1000万円と評価し、配偶者居住権が1000万円であるとすれば、妻は、配偶者居住権(1000万円)と預貯金1500万円を取得することができる(子は、負担付所有権と預貯金1500万円を取得する)。
[野澤正充 2019年7月19日]
(2020-4-7)
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