奈良漬(読み)ナラヅケ

デジタル大辞泉 「奈良漬」の意味・読み・例文・類語

なら‐づけ【奈良漬(け)】

シロウリを主に、ナスキュウリなどを酒粕さけかすに漬けたもの。奈良の漢方医糸屋宗仙が、慶長年間(1596~1615)に創製したといわれる。
[類語]漬物お新香お香香香の物一夜漬け浅漬け古漬け糠漬け塩漬け味噌漬け西京漬け粕漬けわさび漬け福神漬けべったら漬け沢庵漬け

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精選版 日本国語大辞典 「奈良漬」の意味・読み・例文・類語

なら‐づけ【奈良漬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 奈良地方で創製したところからいう ) 酒粕にウリ・ナスなどの野菜を漬けたもの。《 季語・夏 》 〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. 酒につかること。さけづけ。さかびたし。
    1. [初出の実例]「死骸をならづけにして、後日の詮議」(出典:浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中)

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改訂新版 世界大百科事典 「奈良漬」の意味・わかりやすい解説

奈良漬 (ならづけ)

野菜類のかす(粕)漬の別称。かす漬は奈良時代から行われていたが,室町時代になると,奈良が〈南都諸白(もろはく)〉と呼ばれた名酒の産地になり,その酒かすを用いた奈良産のものをこの名で呼んだ。やがて《本朝食鑑》(1697)がいうように,他地方産のかす漬もこれを称するようになった。漬けこむ材料としては,これも大和名産であったシロウリを筆頭に,キュウリ,スイカ,ナス,ショウガ,ダイコンなどが用いられる。いずれもいったん塩漬にしてから,かす床で本漬にする。塩蔵しておいた野菜を使う場合は,水にさらすか,前に使用したかす床につけて塩抜きをしたのち,新しいかす床に漬け込む。
粕漬
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百科事典マイペディア 「奈良漬」の意味・わかりやすい解説

奈良漬【ならづけ】

ウリ類を主とした野菜を酒粕(かす)につけた漬物。奈良地方で発達したのでこの名がある。シロウリ,キュウリ,ナス,ダイコンなどを塩で2ヵ月ほど下漬し,同量程度の酒粕に数ヵ月漬ける。風味を高めるため,途中砂糖,みりんを加えた新しい粕につけ換えをする。香味にすぐれる。
→関連項目粕(糟)漬

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奈良漬」の意味・わかりやすい解説

奈良漬
ならづけ

白うりの粕漬。一般には蔬菜類を酒粕に漬込んだものもいう。酒粕の成分がよくきき,うまみ,香気にすぐれ,べっこう色をしている。うりは肉質の締まった大白うり,かつらうり,大正うりなどが用いられ,粕か塩で下漬をする。またうりのほか,きゅうり,なす,すいかなども用いられる。酒粕には味醂粕を混ぜることもあり,さらに焼酎食塩,砂糖などを加え練り合せ,密閉して使用時まで熟成,保存する。下漬,中漬,本漬の順に粕を替えて漬けていく。あまり長く貯蔵はできない。元来酒造の盛んであった奈良地方で多くつくられたためこう呼ばれる。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「奈良漬」の解説

奈良漬[加工食品]
ならづけ

近畿地方、奈良県の地域ブランド。
奈良の名産品である白瓜や胡瓜西瓜・大根などを塩漬けにした後、約1年酒粕に漬けることでできあがる。鰻の蒲焼きの付け合わせとして知られる。粕漬自体は奈良時代初期からつくられていたが、室町時代、奈良産の名酒・南都諸白の酒粕を使った粕漬を奈良漬と呼ぶようになり、のちに他地方産の粕漬も同じく奈良漬と呼ばれるようになった。慶長年間(1596年〜1615年)、奈良市中筋町の医者・糸屋宗仙が白瓜を酒粕に漬けてつくったのが始まりともいわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の奈良漬の言及

【かす漬(粕漬∥糟漬)】より

…酒かす,または,みりんかすに野菜,魚介類その他を漬けこんだもの。ウリ類,ワサビ,守口ダイコン,クジラの軟骨を漬けたものは,それぞれ奈良漬,ワサビ漬,守口漬,松浦(まつら)漬と呼ばれる。古くから行われていたもので,《延喜式》にはウリ,トウガン,ナス,カブなどの名が見られる。…

【漬物】より

…《雍州府志》(1684)によると,木芽漬はアケビ,スイカズラ,マタタビなどの新芽を細かく切って塩漬にしたもの,烏頭布漬はいろいろな植物の新芽をとりまぜて塩漬にしたものであった。室町期には,香(こう)の物,奈良漬といったことばが現れてくる。前者は,みその異名を〈香(こう)〉というところから,本来はみそ漬をいったことばだとされるが,漬物の総称として使われるようになり,香香(こうこう),新香(しんこう),おこうこ,おしんこなどとも呼ばれるようになった。…

※「奈良漬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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