釈迦に説法(読み)しゃかにせっぽう

精選版 日本国語大辞典 「釈迦に説法」の意味・読み・例文・類語

しゃか【釈迦】 に 説法(せっぽう)

釈迦に対して仏法を説くように、あることを知り尽くしている人に、それを教えることのおろかさ、不必要さをたとえていう。釈迦に経。〔俚言集覧(1797頃)〕
歌舞伎三題噺魚屋茶碗(とと屋茶碗)(1882)三幕「兄貴(あにき)に向って、そんな事は、釈迦(シャカ)説法(セッポフ)、無駄なことだ」

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デジタル大辞泉 「釈迦に説法」の意味・読み・例文・類語

釈迦しゃか説法せっぽう

知り尽くしている人にそのことを説く愚かさのたとえ。釈迦にきょう
[類語]猿に木登り河童に水練

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ことわざを知る辞典 「釈迦に説法」の解説

釈迦に説法

未熟な者がその道の専門家に向かって一人前の口をきくたとえ。教える立場が逆であるというたとえ。

[使用例] 「あなたは、心理試験というものの弱点について考えられたことがありますかしら。〈略〉こんな事を御話するのは釈迦に説法かも知れませんね。でも、これは確かに大切な点だと思いますが、どうでしょう」「それは悪い場合を考えれば、そうでしょうがね。無論僕もそれは知ってますよ」判事は少しいやな顔をして答えた[江戸川乱歩*心理試験|1925]

[使用例] さすがに恭介が苦い顔をしたので、大屋裕も自分の失言に気がついたらしい。〈略〉「これは失礼、先生が医学博士だということはすっかり忘れていましたよ。まったく、釈迦に説法ですねえ」と、ぬけぬけと言ってのけたのである[高木彬光*死神の座|1960]

[解説] 「釈迦」は仏教開祖で、「説法」は仏教の教えを説くことですから、そんなことをすれば、まったくおかしなことになります。相手に対して失礼なのは当然ですが、自分の愚かさをさらけだし、恥ずかしいばかりか滑稽なことになりかねません。
 用例をみると、相手が専門家と知らなかったり失念していたときに、失礼を詫びる場面や、知っていながら自説を述べるときに一言ことわっておく場面で、多く使われています。まがりなりにも「釈迦」にたとえられると、言われた者の怒りの矛先も多少鈍るといえるでしょう。古くは、「説法」の代わりに「しんぎょう」や「経」「説経」などともいわれましたが、今日では見出しの形が定着しています。

[類句] 河童かっぱに水練/猿に木登り

〔英語〕Don't teach your grandmother to suck eggs.(おばあさんに卵の吸い方を教えるな)

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