重力崩壊(読み)ジュウリョクホウカイ(英語表記)gravitational collapse

デジタル大辞泉 「重力崩壊」の意味・読み・例文・類語

じゅうりょく‐ほうかい〔ヂユウリヨクホウクワイ〕【重力崩壊】

自身圧力重力と釣り合いの状態にあった天体が、何らかの理由で圧力が減ったり、重力が増したりした場合に、急激に収縮に転ずる現象白色矮星中性子星ブラックホールなどの天体はこの現象によって形成される。

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改訂新版 世界大百科事典 「重力崩壊」の意味・わかりやすい解説

重力崩壊 (じゅうりょくほうかい)
gravitational collapse

天体が自分自身の重力(万有引力)のために急激に収縮すること。逆に,夜空に輝くふつうの星は重力平衡の状態にある。すなわち,恒星は自分自身の重力のために収縮しようとするが,星の内部高温高圧になっていて,その圧力の差による力で収縮を止め,つり合いの状態に保たれている。しかし,星の内部の温度密度がある特定の範囲内に達し,物質が相変化を起こすときには,恒星は重力平衡にはありえず,重力崩壊を起こす場合がある。ガス雲から星が生まれるとき,ガスが圧縮されて温度が2000Kを超えると,それまでの水素分子は解離して水素原子になり,さらに続いて水素原子はイオン化し,陽子と電子に分かれる。これらの相変化に伴って星は不安定になり,重力崩壊をしてふつうの恒星になる。重力崩壊の速さは,最初は比較的ゆっくりしているが,星が生まれる直前には1ヵ月という速さである。こうして生まれた星の内部では原子核の融合反応が進み,ついに星の中心部が鉄になると,これは原子核燃料の灰である。エネルギー源のなくなった星はもはや重力収縮をするしかない。そして内部の温度が40億Kを超えると,鉄の原子核は高温の下にある光子吸収して,13個のヘリウムと4個の中性子に分解する。この際のエネルギーの吸収と相変化とに伴って,星の中心核は1秒以下の時間で急激に重力崩壊をする。崩壊の始まるときの中心密度は,1cm3当り10億gであるが,密度が1000兆g程度になるまで収縮すると崩壊は止まり,その後に中性子星が残される。その際に衝撃波が発生し,これが星の外層に伝わってそれを吹き飛ばす。超新星爆発である。しかし中心核の質量が太陽の2倍程度より大きい重い星の場合には,重力崩壊はどこまでも続き,ついには一般相対性理論による時空の曲りが問題になってきて,崩壊は止まるところを知らない。このようにしてブラックホールが形成される。
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百科事典マイペディア 「重力崩壊」の意味・わかりやすい解説

重力崩壊【じゅうりょくほうかい】

恒星が自身の重力のために急激に収縮すること。恒星は重力のために収縮しようとするが,内部は核融合反応によって高温,高圧になっているため,その圧力で収縮をおしとどめつり合いの状態を保っている。しかし,星の内部での核融合反応が進んで燃料を消費しつくしてしまうとつり合いの状態は破れ,収縮を始める。収縮によって内部の温度は上がり,40億Kを超えると急激に重力崩壊を生じて,最後には中心部に中性子星が残る。中心核の質量が太陽の質量の約2倍以上ある星では重力崩壊は止まらず,最後にブラックホールが生じると考えられている。

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