地下における密度の分布が地表における重力の観測値に反映することを利用して地下構造を推定する物理探査の一方法。石油探査の初期の概査によく用いられるほか,鉱物資源調査や学術調査にも利用される。観測装置としては,19世紀末に重力の水平傾度などを測定する重力偏差計が発明され,油田の探査に広く利用されたが,1930年代になりスプリングによるばねばかりを原理とする小型軽量の重力計が出現し,観測時間も1/10程度となり,重力偏差計に取って代わることとなった。40年代には重力計を密閉し海底に降下して観測することができ,さらに50年代末から60年代にかけて,動揺する船上で測定できる船上重力計が使用されるようになった。そのほか,石油坑井内で観測するための坑井内重力計も利用されるようになってきている。これらの重力計は長さが荷重に比例するスプリングを使用して観測点間の重力差を比較測定するもので,既知の観測点があれば絶対重力値を求めることができる。重力探査では,重力の単位として1Gal(ガル)(1cm/s2)の1/1000のmGalを用いる。
重力計で観測された重力値は観測点の標高・周辺地形の起伏・緯度などの影響を受けているために,これらを除く次のような補正が必要である。(1)フリーエア補正 標高が高くなると重力値が小さくなることに対する補正。(2)地形補正 周辺地形の起伏による引力に対する補正。(3)緯度補正 各緯度における標準重力を緯度の関数として表した国際公式による値を差し引くことによって求める補正。(4)ブーゲー補正 観測点と基準面の間にある物質による引力に対する補正で,物質の密度に関係する補正であり,観測地域での岩石密度を実測するなどにより決定される。これらの補正を施した値をブーゲー異常と呼び,平面図上で同じ異常の点を結んで描かれたものがブーゲー異常図(重力異常図または単に重力図)と呼ばれる。重力異常図を用いて地下構造を推定する場合には,一般に堆積岩は埋没深度とともに密度が大きくなること,堆積岩と比較して火成岩の密度が大きいことなどに着目して,堆積層の厚薄,背斜構造・火成岩貫入の有無などを推定する。堆積盆地での基盤構造を推定する場合には,基盤の露出しているところや坑井により基盤深度のわかっているところを基準として重力断面図を作成し,できるかぎり正確な密度差を用いて構造断面を計算する方法がよく用いられる。また地下構造によるローカルな重力異常が地域的な異常に隠されている場合に有効な方法として,地域的な異常を二~七次の多項式により近似して取り除き残査重力図を得る傾向面解析法,鉛直二次微分法,フーリエ級数展開によるフィルター解析など種々の方法が試みられている。
→重力異常
執筆者:梅戸 在明
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…しかしながら,この推定を確かめたり,さらに深いところの状態を推定するためには,他の方法を用いなければならない。(1)物理探査 いろいろな地球物理学的手法を用いて行う調査方法であり,主として利用する物理量の違いによって方法が異なり,それぞれ,地震探査,重力探査,磁気探査,電気探査,放射能探査,地温探査,物理検層などと呼ばれている。(a)地震探査 地下の岩石や地層の中を波動として伝搬する弾性波の速度を測定することによって,地下構造を明らかにする調査で,古くから,自然発生地震によって地球の内部構造,とりわけ地殻やマントル上部の構造を明らかにするために用いられてきた方法である。…
※「重力探査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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