量子科学技術研究開発機構(読み)リョウシカガクギジュツケンキュウカイハツキコウ

デジタル大辞泉 の解説

りょうしかがくぎじゅつけんきゅうかいはつ‐きこう〔リヤウシクワガクギジユツケンキウカイハツ‐〕【量子科学技術研究開発機構】

放射線と人の健康に関する総合的な研究開発に取り組む、文部科学省所管の国立研究開発法人。放射線の医学利用(重粒子線がん治療、MRIPETなどの分子イメージング)の促進放射線防護緊急被曝医療の研究などを行う。旧称放射線医学総合研究所。平成28年(2016)、日本原子力研究開発機構核融合研究開発部門と量子ビーム応用研究部門の一部を統合して現名称となる。本部は千葉市。量研機構QST(National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

量子科学技術研究開発機構
りょうしかがくぎじゅつけんきゅうかいはつきこう

量子科学技術に関する研究開発や放射線の人体への影響、被曝(ひばく)医療および放射線の医学的利用に関する研究等を行う文部科学省所管の国立研究開発法人(独立行政法人)。略称は量研。英語名はNational Institutes for Quantum Science and Technology、略称はQST。「国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構法」(平成11年法律第176号)を根拠法とする。本部は千葉県千葉市稲毛(いなげ)区穴川(あながわ)。1957年(昭和32)科学技術庁所管の放射線医学総合研究所として発足、2001年(平成13)1月省庁再編に伴い文部科学省に移管、同年4月に独立行政法人となった。2016年4月、独立行政法人日本原子力研究開発機構の一部を移管し、あわせて現名称に変更。放射線医学総合研究所は、機構内の研究部門の一つとなった(2021年4月、組織再編に伴い「放射線医学研究所」に改称)。

 量子科学技術研究開発機構は、量子生命・医学、量子ビーム科学、量子エネルギーの三つの部門をもち、量子・放射線に関する研究・開発を総合的に行っている。

 量子生命・医学部門では、重粒子線などによるがん治療など、放射線の医学利用のための研究、放射線防護や被曝医療等の研究、放射線事故・原子力災害への対応、量子科学技術に関する研究などを行う。同部門内には、量子医科学研究所(重粒子線治療研究、脳機能イメージング研究、先進核医学基盤研究など)、放射線医学研究所(被曝医療、放射線緊急事態対応、福島再生支援研究、放射線影響研究など)、QST病院(重粒子線治療を中心としたがんの放射線診断・治療など)、量子生命科学研究所(タンパク質機能解析、幹細胞研究、量子再生医工学研究、量子認知脳科学など)が設置されている。

 量子ビーム科学部門では、高崎量子応用研究所(群馬県高崎市綿貫(わたぬき)町)と関西光科学研究所(京都府木津川(きづがわ)市梅美台(うめみだい)、兵庫県佐用(さよう)町)の二つの拠点をもち、荷電粒子、γ(ガンマ)線、中性子線等の量子ビームの発生・制御やこれらを用いた高精度な加工や、高強度レーザー等の技術開発、電子やイオンのレーザー加速などに関する研究を行う。先進的な量子ビームテクノロジーにより医・理・農・工の幅広い分野で革新的成果やイノベーションを創出している。

 量子エネルギー部門では、「核融合」反応を、地上で効率良く実現し電力を生み出す装置などの研究開発を行っている。那珂(なか)核融合研究所(茨城県那珂市)と六ヶ所(ろっかしょ)核融合研究所(青森県六ヶ所村)を拠点とし、那珂核融合研究所では超伝導コイルを備えた新たな核融合実験装置に関する研究を、六ヶ所核融合研究所では「国際核融合エネルギー研究センター事業」(IFERC事業:International Fusion Energy Research Center)や「国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動」(IFMIF:International Fusion Material Irradiation Facility)のプロジェクトを進めている。また、フランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER(イーター):International Thermonuclear Experimental Reactor)計画に参加している。

 量子科学技術研究開発機構は、2015年原子力災害対策指針に基づき、弘前(ひろさき)大学、福島県立医科大学、広島大学、長崎大学の各病院とともに「高度被ばく医療支援センター」に指定され、2019年には高度被ばく医療支援センターの中心的・先導的役割を担う「基幹高度被ばく医療支援センター」に指定された。また国際活動として、国際原子力機関(IAEA)の協働センターなどへの協力のほか、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR(アンスケア):United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)や国際放射線防護委員会(ICRP:International Commission on Radiological Protection)などへ専門家の派遣を行っている。

[編集部 2021年11月17日]

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