(読み)のこぎり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「鋸」の解説


のこぎり

木材を引切るために用いる木工刃具の総称。特殊なものとして石材,金属材用のものもあるが,ほとんど同じ原理である。薄い工具鋼板の縁に多くの鋸目の刃をつけ,全体を焼入れしたもの。鋸目に縦びき用,横びき用の粗密があり,木目により使い分ける。簡単な平板状の一般形のほか,形状により丸鋸帯鋸糸鋸,さらにチェーン鋸に大別される。鋸は汎世界的な工具であるが,ほとんどの国のものは押切り型で,日本の引切り型は特殊ケースである。エジプトでは前4千年紀に青銅製の鋸が使われていた。中国では戦国時代に鉄製のものが現れる。日本では古墳時代に入ってから,幅約 3cm,長さ 20~25cmほどの細長い鉄板の両側に刃をつけたものが出現する。いわゆる引き鋸といわれる片刃で, (なかご) の一部を柄につけたものが使われるのは,奈良時代以降のことである。

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精選版 日本国語大辞典「鋸」の解説

のこ‐ぎり【鋸】

〘名〙 (「のほぎり(鋸)」の変化した語)
① 木材・金属材・プラスチック材・竹材などをひき切るのに用いる工具。薄い長方形の鋼板の縁(ふち)歯形を刻んで柄をつけたもの。形状・用途により両刃鋸・あぜひき鋸・糸鋸・竹びき鋸、また、動力を使う機械鋸(円鋸・帯鋸)などがある。のこ。のこずり。〔大般若経字抄(1032)〕
※平家(13C前)四「いかにもしてまづ競めをいけどりにせよ。のこぎりで頸(くび)きらん」

のほ‐ぎり【鋸】

〘名〙 「のこぎり(鋸)」の古名
※大智度論平安初期点(850頃か)一六「大きなる鉄の鋸(ノホキリ)をもて解き析き」

のこ【鋸】

〘名〙 「のこぎり(鋸)」の。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕

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百科事典マイペディア「鋸」の解説

鋸【のこぎり】

木材・金属等を切断する工具。〈のこ〉ともいう。手のこと機械のこに大別,手のこは主として木・金工に使用。刃の形により縦引のこと横引のこがあり,前者は木繊維の方向に,後者は直角方向に切る場合に用いる。曲線を切り抜く回し引きのこ,敷居の溝等を切る畔(あぜ)引きのこ,金工用の弦(つる)掛けのこ等各種ある。機械のこには丸のこ・帯のこ等があり,製材等に使用。林業用にはチェーンソーがある。
→関連項目木工具

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デジタル大辞泉「鋸」の解説

のこ‐ぎり【×鋸】

木材のほか金属・石などを切るのに用いる、薄い鋼板の縁に歯形を刻んで柄をつけた工具。木材の繊維に沿って切るものを縦挽きのこ、横断して切るものを横挽き鋸といい、用途により畔挽き鋸・竹挽き鋸・糸鋸や、動力を用いる機械鋸などがある。
[類語]

きょ【鋸】[漢字項目]

人名用漢字] [音]キョ(漢) [訓]のこぎり
大工道具、また、刑具の一。のこぎり。のこ。「鋸歯/刀鋸」
[難読]大鋸屑おがくず

のこ【×鋸】

のこぎり」の略。「糸
[類語]

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家とインテリアの用語がわかる辞典「鋸」の解説

のこぎり【鋸】

木・石・金属などを切る工具。薄い鋼板の縁に多くの歯を作り、焼き入れをして硬い刃とし、柄をつけたもの。片歯・両歯・胴付き(片歯で身が薄く、背側に「背金」とよばれる補強が付いたもの)・回し引き(曲線・切り抜き用)・糸のこなどがある。

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世界大百科事典 第2版「鋸」の解説

のこぎり【鋸 saw】

材を切断する工具(図)。〈のこ〉ともいう。一般には製材・木工用の工具だが,金属を切るものもある。
[鋸刃の機能]
 木材は繊維体で,組織は一様でなく,弾性を多分に有するため,その切断を容易にし,かつその切断面を平滑にするには,鋸刃の形,配列にいろいろの工夫がなされる。鋸びきは木材の繊維を切断する仕事と,切断によってできた〈おがくず(鋸屑)〉を挽道外に排出する仕事の二つからなりたっているが,前者は主として鋸刃先の鋭利さに,後者は歯形,歯数などに左右される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「鋸」の解説


のこぎり

木材、竹、金属、石材などを切断する道具。歴史は古く、エジプトでは旧石器時代後期には燧石(ひうちいし)製の鋸がみられ、紀元前16世紀ごろに銅製のものが、紀元前8世紀に鉄製の鋸が使われていた。日本最古の鋸は、5世紀のアリ山古墳(大阪府藤井寺市)出土のものといわれており、古墳時代前期のものが10例ほど数えられる。この時代の鋸は短冊型鉄板に素歯を刻んだ簡単なものであるが、鋸身(のこみ)の一部しか残存していないため、木柄(もくえ)の装着方法や形態など詳しいことは不明である。飛鳥・奈良時代の遺物としては、正倉院宝物の鋸と法隆寺献納宝物の鋸が、当時の着装状態のまま残っている。平安時代なかばごろ、木の葉型の鋸が現れ、鎌倉時代以降盛んに使われた。絵巻物から判断すると、背が直線状で、歯の部分が丸く反りがついている。実物の鋸が少ないのは、薄い鉄板でできており、錆(さび)に弱く、使われなくなったら赤錆が発生し、やがて土に還(かえ)ってしまうからである。1本で何種類かの用途に使用されていた万能型と思える木の葉型鋸は、江戸時代中期に用途に応じた専用の鋸が数多く出現するまで、長い期間にわたって使用され続けた。室町時代になると二人で使用する製材用の「大鋸(おが)」が大陸から伝わった。それ以前の製材は、打割(うちわり)製材で木目が通って割りやすいスギやヒノキが好んで用いられたが、しだいに良質な木材は枯渇していった。この縦挽鋸(たてびきのこ)による新たな製材法を挽割(ひきわり)製材という。縦挽鋸の使用によって、木目のねじれたマツや堅いケヤキなど、打割製材では使いにくかった樹種を扱えるようになり、さらに、薄い板や細かい角材なども容易につくれるようになった。その影響は建築にも現れ、太く大きな部材を用いた以前の建築に比べ、細く薄い材が多用されるようになる。障子や引き戸など軽い建具の普及や、いまの和室の原形である書院造の成立などにも、その影響の一端がうかがえる。

 大鋸は製材法を革新する道具であったが、それほど長く使われなかった。日本独自の進化を遂げた一人挽きの製材用鋸「前挽(まえびき)大鋸」が16世紀に登場すると、大鋸にとってかわり、近年に至るまで製材用縦挽鋸の主流となった。大鋸・前挽大鋸が登場した時代は、大鋸挽・木挽(こびき)という製材専門の職人が登場した時代でもある。木挽は重労働を担うだけでなく、木取り(丸太材から材木を切り出すこと)をする職人としても技術を究め、一方で大工は製材の重労働から解放されることになった。江戸時代中期、大工や大工の技術の分化、専門化が急速に進み、鋸の種類が増え、鋸身が四角で歯線が直線になった片刃鋸へと変身したのは江戸時代末期と思われる。現在よく使われる両刃鋸は、明治中ごろから普及した。

 鋸の形式は、機能部分の鋸身が自立しているか否かで、「鋸身自立形式」と「鋸身補強形式」に分けられる。鋸身補強形式は、鋸身を部分的に補強した「鋸背補強形式」と鋸身全体を緊張させた「枠形式」に大別できる。さらに、鋸背補強形式は、背部分を木や金属で補強した「鞘(さや)形式」と金属製の弦(つる)で補強した「弦形式」に、枠形式は、木や竹を弓状に曲げ鋸身を緊張させる「弓形式」、枠の中央を支点に縄などを絞ることによって鋸身に張力を与える「中央支柱形式」、枠の両側を固定して中央の鋸身にくさびやねじを用いて張力を与える「両側支柱形式」にそれぞれ分類できる。

 大工の鋸の種類には、前挽・鑼(かがり)・横挽(よこびき)・両刃・穴挽(あなびき)(鼻丸)・胴付・畦挽(あぜびき)・挽廻(ひきまわし)・細挽の9種12丁に区分される。丸太や梁(はり)材の切断などの荒仕事に用いる大型の鋸から、細かな造作(ぞうさく)に用いる小型の鋸までさまざまなものがある。大型の鋸には、横挽きの穴挽鋸、縦挽きの挽割鋸・舟手(ふなて)挽割鋸などがあり、中型の鋸には横挽きの挽切(ひききり)、縦挽きの鑼、縦挽き・横挽きの両者を備えた両刃鋸などがある。また、小型の鋸は、多様な用途に応じて多彩な形状のものがみられる。挽廻鋸は、鋸身が細くつくられており、曲線を挽くことができる。鴨居挽(かもいびき)鋸や畦挽鋸は溝の挽き込みに使うもので、畦挽鋸の湾曲した歯道は、平面の途中から挽き出すときなどに効果を発揮する。精密な加工で用いる胴付鋸は鋸身が非常に薄く、そのために補強の背金(せきん)がついている。竹挽鋸や金鋸(かなのこ)は、偏平なコの字型のフレームに鋸身を張った鋸で、一種の弓鋸である。糸鋸もこの種類に属し、糸状の細い鋸身を緊張させて、複雑で細かな模様などの曲線の切り出しに使用する。

 鋸歯の歯形には、縦挽きと横挽きがある。木材は繊維が一方向に向いているため、繊維に対して平行に切るか(縦挽き)、直交して切るか(横挽き)で、切り方が違う。そのため繊維方向に平行に挽くときには繊維をそぎ取るため、のみや決り鉋(しゃくりかんな)の刃を縦に並べたような形をした刃、繊維の方向に直交に挽くときは繊維を断ち切る小刀のような形をした刃、と使い分ける。この横挽きの歯形は、縦挽きの歯の山形の両辺を斜めに摺(す)り落とした形になっており、この小刀の刃先のような斜めの面を「なげし」という。

 また、木材を挽き切るとき、抵抗を少なくして、挽き屑(くず)を出しやすくするために「あさり」が工夫された。あさりとは、鋸歯を一枚ずつ左右に互い違いに振り分けることをいい、鋸身の幅よりも少し広く挽くことで、鋸身が材に挟まれて動きにくくなるのを防いでいる。

 鋸身の材料は、日本刀の原料と同じ玉鋼(たまはがね)で製作していたが、今日では量産されている国産や外国産の鋼を使っている。柄には、一般的にスギやキリのように軽い木が使われ、滑り止めのため、また割れないようにしばしばトウやタコ糸などで巻かれる。

 鋸は、使ううちに歯先が摩耗して切れ味が悪くなるので、ときどき歯を調整・研磨する必要がある。この作業を「目立て」といい、あさりをつける「あさり出し」と、歯を研ぐ「やすりがけ」という二つの作業からなる。あさり出しは、鋸を金床の上に置いてあさり槌(つち)で鋸歯を1枚おきにたたくという方法をとる。またやすりがけは、鋸挟(のこばさ)み板に鋸身を挟んで、鋸歯1枚ずつを専用のやすりで研磨していく作業である。

 機械鋸には丸鋸(まるのこ)と帯鋸(おびのこ)がある。ダイヤモンドや超硬合金を歯先につけた丸鋸は、金属、石、アスファルトなどの切断に用いられる。さらに金剛砂などを薄い円版状にして取り付けたものもある。家庭用の電動工具には、丸鋸とジグソー(挽廻鋸と同じ用途)がある。

[赤尾建蔵 2021年7月16日]


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世界大百科事典内のの言及

【木挽】より

…仕事場はリンバなどと呼ばれるが,木をひくための台をリンといったからである。マエビキという大鋸(おが)で,リンに載せた材木を縦にひき割るのであるが“木挽の一升飯”というくらい,精力を消耗する重労働とされている。彼らが一人前となる条件は,彼らの間に〈山小屋3年,白木屋(しろきや)3年〉のことわざがあるように,山のリンバで3年間,里の白木屋で3年間というような長期の修業が必要とされていた。…

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