鎌鼬(読み)かまいたち

精選版 日本国語大辞典 「鎌鼬」の意味・読み・例文・類語

かま‐いたち【鎌鼬】

〘名〙 突然皮膚が裂けて、鋭利な鎌で切ったような切り傷ができる現象気候変動空中真空部分が生じたとき、これに触れた人体内の空気が、一時に平均を保とうとするために起こるといわれる。昔は目に見えないイタチのしわざと考えられたところからいう。越後七不思議一つに数えられ、信越地方に多い現象。鎌風(かまかぜ)。かまえたち。《季・冬》
※俳諧・昼礫(1695)「臑に負ふ疵ねだられぬ鎌鼬」

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デジタル大辞泉 「鎌鼬」の意味・読み・例文・類語

かま‐いたち【鎌×鼬】

突然皮膚が裂けて、鋭利な鎌で切ったような傷ができる現象。特に雪国地方でみられ、越後の七不思議の一つとされる。空気中に真空の部分ができたときに、それに触れて起こるといわれる。昔は、イタチのしわざと信じられていた。鎌風。 冬》「―かや負ふ人の倒れけり/秋桜子

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改訂新版 世界大百科事典 「鎌鼬」の意味・わかりやすい解説

鎌鼬 (かまいたち)

旋風に乗ってきて人を斬ったり,生血を吸うといわれる魔物。鎌できられたような傷をうけるが,痛みも出血も見られないという。広く各地に分布するが,とくに雪国に多く見られる。かまいたちは新潟や長野では悪霊や魔獣のしわざだというが,飛驒の丹生川地方では3人連れの神によるもので,先頭の神が人を倒し,2番目が刃物で切り,3番目が薬をつけていくと伝承している。また四国では墓地野ざらしの鎌の化物だとされている。旋風そのものをカマカゼ,カマイタチと呼ぶ所もあり,かまいたちの傷は小旋風の中心にできた負圧の部分に触れたことによるのではないかと説明されている。しかし,旋風とイタチとがなぜ結びついたかは不明である。新潟県西蒲原郡の弥彦山と国上山の間の黒坂という所で転倒すると必ずこの害にあうといい,一方同県小千谷市片貝町のカマキリ坂には昔大カマキリがいて,この坂で転んだ者は鎌傷に似た傷を負わされて苦しんだと伝えている。カマキリを方言でカマイタチと呼ぶ例もあるから,両者に何らかの関係があるものと思われる。このように場所が一定している例のほかに,鎌をかついだり暦をまたいだりするとかまいたちにやられるという伝承もあり,その原因は一定していない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鎌鼬」の意味・わかりやすい解説

鎌鼬
かまいたち

鎌風ともいう。道などを歩いているとき,突然鎌で切られたような傷を受ける怪異現象の1つ。出血もなく,痛みも感じない。塵旋風,真空説,寒冷説,電気説など種々あり,地方によっては,旋風をカマイタチともいう。気圧の急変などの自然現象によるものとも説明されている。かつて神奈川地方ではカマカゼ,静岡地方ではアクゼンシカゼといっていた。越後七不思議の1つに数えられている。

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百科事典マイペディア 「鎌鼬」の意味・わかりやすい解説

鎌鼬【かまいたち】

旋風に乗ってきて人を切り生き血を吸うという魔獣。旋風によって切り傷ができるのを鎌鼬に切られたといい,全国各地,特に雪国地方にこの言伝えが多く,旋風を鎌鼬と呼ぶ所もある。切り傷ができるのは旋風の中心に真空ができるためというが,なぜ鎌鼬のしわざとするか不明。信越(しんえつ)地方では暦を踏むと鎌鼬にあうという。神奈川県では鎌風という。

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