(読み)ニョウ

デジタル大辞泉 「鐃」の意味・読み・例文・類語

にょう〔ネウ〕【×鐃】

仏教で使う打楽器の一。フライパン型の金属製の銅鑼どらで、ひもで下げ、ばちで打つ。

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精選版 日本国語大辞典 「鐃」の意味・読み・例文・類語

にょうネウ【鐃】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (しょう)・鈴(れい)に似た中国の打楽器。桴(ばち)で打って鳴らす。奏楽軍中で用いた。どう。
    1. [初出の実例]「楽の声、簫・笛・〈略〉鐃・銅鈸を調べ合せたり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鳥の舞)
    2. [その他の文献]〔周礼‐地官・鼓人〕
  3. 仏寺で用いる銅鑼一種。鈸と組み合わせて用いられる。
    1. [初出の実例]「正月最勝王経斎会堂装束〈略〉金銅仏器一具。鉢一口。〈略〉鐃四口。箸一具」(出典:延喜式(927)一三)

くすび【鐃】

  1. 〘 名詞 〙 軍中に用いる小さな銅鑼(どら)、または鉦(かね)の類。くすみ。
    1. [初出の実例]「鐃(クスヒ)挿せる者(ひと)〈鐃の字(な)未だ詳ならず〉二騎」(出典日本書紀(720)欽明一四年一〇月(寛文版訓))

くすみ【鐃】

  1. 〘 名詞 〙くすび(鐃)

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普及版 字通 「鐃」の読み・字形・画数・意味


20画

[字音] ドウダウ)・ニョウ(ネウ)
[字訓] どら・じんがね・かまびすしい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は堯(尭)(ぎよう)。堯に撓(どう)の声がある。〔説文〕十四上に「小鉦なり」とし、また「軍法に、卒長は鐃を執る」とあって、軍中に用いるドラの類。殷の楽器に鐃とよばれるものがあり、極めて大型の器。ほとんど江南の山陵地帯より出土。南方諸族との境界に接する地であることから考えると、異族に対する厭勝(ようしよう)(まじない)の呪器であり、時に祭祀に用い、平時は埋めていたものであろう。南方族の銅鼓は、ほぼその境界に沿って、最も古い形式のものがあり、また呪器であり、祭器であったものと考えられる。卒長の執るところの鐃は、のちの短簫鐃歌(たんしようどうか)に用いたものであろう。漢に短簫鐃歌十八曲があり、胡人の用いた外来曲に詞を加えたものと思われる。

[訓義]
1. どら、じんがね、すず。
2. 殷代の楽器、口を上にして用いるが、極めて大型であるから、柄を地に樹てて用いたものであろう。
3. にょうはち、両手に一面ずつをもち、うち合わせる楽器。
4. (どう)と通じ、かまびすしい、みだれる、やかましい。
5. 撓と通じ、たわむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕鐃 トシ・トカリ・ホコル・アツマル 〔字鏡集〕鐃 トカリ・ホツツミ・ホツマル・トシ・ホフル

[語系]
鐃・njiは同声。は〔説文〕三上に「恚(いか)り(よ)ぶなり」とあり、はげしい声でよぶ意。鐃はせわしく、やかましくたたく楽器の意であろう。殷代の鐃には自名の銘はなく、その形制を以てかりにその名が与えられている。

[熟語]
鐃歌・鐃鼓・鐃吹・鐃
[下接語]
金鐃・鼓鐃・執鐃・簫鐃・吹鐃・征鐃・清鐃・鐸鐃・舞鐃・文鐃・鳴鐃

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改訂新版 世界大百科事典 「鐃」の意味・わかりやすい解説

鐃 (にょう)

中国,朝鮮,日本の青銅製打楽器。〈どう〉ともいう。(かね)・銅鑼(どら)の類,(れい)類,銅鈸(どうばつ)類のいずれについても用いられた名称。古代中国では舌をもたない大型の鈴をいい,のちには舌をつけたものも指す。周・漢代には種々の合奏,とくに軍楽に用いた。その後,軍楽のほかに,仏教や道教の儀式音楽にも用いられたが,その多くは大型の銅鈸であり,古制の鈴類のものもみられた。宋以後仏教音楽の中で銅鈸のことを鐃と呼ぶようになり,これを銅鐃と称したこともある。明・清以後,戯劇の音楽や鑼鼓楽で用いる鐃は銅鑼である。朝鮮では李朝初期には雅楽器の一種として用いられた。日本ではふつう仏教儀式用の銅鑼をいう。密教法会で鈸と組み合わせて用いるので〈鐃鈸(にようはち)〉という成語がある。ほかに,鈴(すず)の類で鐃と称するものがあるが,これは球形の鈴に柄をつけたもので,奈良時代に伝来した法具の一種と考えられている。その他,古くは金鼓や鉦の別名としても鐃という名称が用いられた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鐃」の意味・わかりやすい解説


にょう

中国の体鳴楽器。「どう」とも読む。 鈸 (はち。銅 鈸) の大型のもの。日本では仏教で用い,次の2種がある。 (1) 球状で一文字の口が開き,先端が三鈷杵形をした柄をつけ,中に鈴子を入れて振鳴らす。金鐃,鈴 (れい) ともいう。 (2) 銅鑼の類で銅製,鋳鍛造の丸盆状のもの。縁に紐をつけ棒で打つ。 鈸とともに用い,鈸をさす場合もある。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【鐃】より

…その後,軍楽のほかに,仏教や道教の儀式音楽にも用いられたが,その多くは大型の銅鈸であり,古制の鈴類のものもみられた。宋以後仏教音楽の中で銅鈸のことを鐃と呼ぶようになり,これを銅鐃と称したこともある。明・清以後,戯劇の音楽や鑼鼓楽で用いる鐃は銅鑼である。…

【銅鑼】より

…中国,朝鮮の雲鑼(うんら)は,銅製の小鑼を十数個枠につるしたもの。日本の銅鑼(度鑼)は,中国から仏寺に伝わった鑼が広まったといわれ,仏教音楽で用いるものを特に鐃(によう)と呼ぶ。日本の銅鑼は,手あるいは木枠につるし,棒の先端を球状に布で包んだ桴で普通は外面の中央を打つ。…

【鈴】より

…密教法会で導師が用いるが,似た形状の鈴を御詠歌の伴奏にも用いる。この他,仏教楽器で鈴とも称されるのは,柄のついた球状の本体に一文字の割れ目があり,中の球が触れて音がする鐃(によう)(金鐃(こんによう))である。南都の悔過(けか)系法要で大導師や呪師などが用いる。…

※「鐃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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