中国,朝鮮,日本の金属製打楽器。シンバルの類で,中央が円形に隆起している円盤を打ち合わせて用いる。単に鈸ともいい,古くは抜,跋などとも書いた。中国では銅鈸子,銅盤ともいい,鐃(によう),鐃鈸,鋪,星などとも称した。インドから仏教楽器として渡来,古くは銅抜,銅跋などと書いたが,唐以後銅鈸と書くようになった。宮廷宴楽や仏教音楽に用いられたが,元以後劇楽で重要な打楽器となり,とくに京劇の武場では,大小の鈸を盛んに用いる。朝鮮でも,八音の分類による金部の俗部に銅鈸が見られる(《増補文献備考》)。
日本には奈良時代にすでに伝来しており,この当時は雅楽にも用いられていた。平安時代以後〈銅拍子〉の名が生じ,〈どうびょうし〉〈どびょうし〉などとよみ,〈土拍子〉と書くようにもなった。雅楽では,現在では舞楽のときに舞具として小型の銅拍子を使用する(《迦陵頻(かりようびん)》)。仏教音楽では〈どうばち〉ともいい,あるいは〈はち〉といって〈鉢〉の字を当てることもある。かなり大型のものを用いるが,声明曲(しようみようきよく)《三十二相》などには小型のものを用い,これを〈羯鼓(かつこ)〉と呼ぶ。仏教音楽では2枚の円盤を打ち合わせたあと,余韻が響いている間に2枚の縁をかすかに触れ合わせる技法が特徴的である。鐃と組み合わせることが多いので〈鐃鈸(にようはち)〉という成語があるが,鐃鈸といって鈸だけを指す場合もあり,また大型の鈸を鐃鈸と称することもある。歌舞伎の囃子では〈チャッパ〉と呼ばれ,民俗芸能では〈かね〉〈手平(てびら)がね〉〈手拍子〉〈どびょうし〉などという。
執筆者:三谷 陽子+加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
東アジアの金属製シンバル。単に「鈸」ともいう。大きさは直径約10センチメートルないし35センチメートルまでさまざまで、中高になった円盤中央部に紐(ひも)をつけ、それを持って打ち合わせる体鳴楽器。中国では「銅鈸子(ばつし)」などと書き、宮廷音楽、仏教音楽に用いられたが、元代以降京劇などの劇音楽で盛んに用いられるようになった。朝鮮でも仏教音楽やシャーマンの音楽に使用される。日本へはすでに奈良時代に伝来しており、平安時代には「銅拍子(どびょうし)」「土拍子」とよばれるようになった。「銅鈸子」と称して舞楽の『迦陵頻(かりょうびん)』の舞具として用いられるほか、出雲流神楽(いずもりゅうかぐら)、山伏神楽、田楽(でんがく)などの民俗芸能、「チャッパ」と称して歌舞伎(かぶき)の下座(げざ)音楽で使用される。仏教音楽では「はち」(鈸・鉢)と称し、「鐃(にょう)」とセットで用いる。
[柴田典子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈どう〉ともいう。鉦(かね)・銅鑼(どら)の類,鈴(れい)類,銅鈸(どうばつ)類のいずれについても用いられた名称。古代中国では舌をもたない大型の鈴をいい,のちには舌をつけたものも指す。…
※「銅鈸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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