長野郷(読み)ながのごう

日本歴史地名大系 「長野郷」の解説

長野郷
ながのごう

和名抄」にみえるが、諸本ともに訓はない。志紀地方の長野は古代では比較的著名な地名である。「日本書紀」神功皇后二年一一月条では仲哀天皇を長野陵に、同書允恭天皇四二年条では允恭天皇を長野原陵に葬ったとある。「延喜式」(諸陵寮)では、前者を恵我えが長野西陵、後者を恵我長野北陵とする。前者は藤井寺市のミサンザイ古墳、後者は同市の市野山いちのやま古墳に治定される。この治定に根拠があったとすると、「大阪府全志」も推定するように、郷域は古室こむろ沢田さわだおか・藤井寺(現藤井寺市)の地域であったことになる。「日本地理志料」は右のほかに誉田こんだ(現羽曳野市)を含ませているがその必要はない。「大日本地名辞書」は郷域を明治二二年(一八八九)成立の長野村(現藤井寺市)に限定し、長野の地名を古代志紀地方のなかの広範囲な地域をさすとするが、一案というべきであろう。


長野郷
ながのごう

応安七年(一三七四)末、「上野国長野郷内寺内」住人刑部房井範は同国大八木おおやぎ住人とともに紀伊熊野本宮に願文をささげた(同年一二月三〇日「兵部房重盛引檀那願文」熊野本宮大社文書)。史料にみえる長野郷の早い例で、長野郷住人と熊野との結びつきが知られる。また明徳三年(一三九二)一一月二六日には「上野国長野常隆寺住」の刑部阿闍梨以下三人が同社に願文をささげている(同文書)。室町時代には上野守護領となっており、応永三年(一三九六)七月二三日管領斯波義将施行状(上杉家文書)は、長野郷を含む諸所を上杉憲定代官に沙汰付けるよう関東管領に命じている。


長野郷
ながのごう

愛知川東岸、現長野一帯に比定される。「和名抄」に記され、中世まで続く郷。保安三年(一一二二)三月二五日付近江国司庁宣写(書陵部本医心方小児部二五裏文書)にみえる愛知郡司成行は中原姓で、「江州中原氏系図」には「愛智大領」と号し、堀河院の頃長野郷に住したと記す。成行は日吉社神人でもあった。鎌倉後期には小大国こおおくに郷、吉田よしだ(現犬上郡豊郷町)小八木こやぎ(現湖東町)とともに愛知郡四ヵ郷とよばれる坂本日吉社領で、延暦寺東塔南谷の知行、奉行は禰宜俊貞。大宮毎夜御油・相撲会単衣・八王子宮小朝拝などの費用に充てられていた(元応元年「日吉社社領注進記」)。ただし郷全体が日吉社領だったのではないらしい。


長野郷
ながのごう

「和名抄」高山寺本・東急本ともに「奈加乃」と訓ずる。片岡かたおか郡にも同名郷があり、同訓である。明治二二年(一八八九)現高崎市西北部の八ヵ村を合併して成立した旧長野村を遺名とみる。応永一〇年(一四〇三)正月一六日の上杉憲定寄進状(明月院文書)に「長野郷内西柴村半分」、同二三年六月三日の上杉憲基寄進状(同文書)に「長野郷内簸輪本郷」、また同三一年五月晦日の上杉憲実寄進状(鎌倉市立中央図書館蔵)に郷内「東荒浪村」がみえる。


長野郷
ながのごう

「和名抄」高山寺本は訓を欠き、東急本には「奈加乃」と訓ずる。群馬郡にも同郷がみえ、高山寺本は「奈加乃」と訓じている。片岡郡内とみられる地域に、遺名とする地名は見当らない。一方、群馬郡内には明治二二年(一八八九)現高崎市の西北部八ヵ村が合併して成立した長野村がある。郷域について「日本地理志料」は現高崎市南部のからす川右岸の寺尾てらお根小屋ねごやの諸村とし、「大日本地名辞書」は碓氷うすい川右岸の乗附のつつけ石原いしはら寺尾の地にあたるとしている。片岡郡はもともと群馬郡と烏川を挟んで相接していた郡で、しかも烏川沿いに丘との間に挟まれた細長い郡である。


長野郷
ながのごう

「和名抄」は諸本とも訓を欠く。天治二年(一一二五)八月の近江国司庁宣(早稲田大学所蔵文書)に京都尊勝そんしよう(跡地は現京都市左京区)こう御園の庄田五六町のうち一〇町が「長野善田蚊野等郷内」にあったと記す。保延四年(一一三八)五月二〇日の鳥羽院庁下文(同文書)八木やぎ郷善田庄とあるように八木郷のことを示すから、この三郷は隣接していたことになる。


長野郷
ながのごう

「和名抄」諸本にみえる郷名。高山寺本・東急本に「奈加乃」の訓がある。式内社長野神社は当郷に存在したと考えられる。「遠江国風土記伝」が豊田とよだ中野なかの前野まえの(現磐田市中野・前野付近)などとし、「大日本地名辞書」も長野神社を前野付近として郷域を長野村・十束とつか(現磐田市前野付近から現竜洋町平間・堀之内・中島などの地域)に比定する。


長野郷
ながのごう

「和名抄」諸本とも文字の異同はなく、訓を欠く。「太宰管内志」は「奈加乃と訓ムべし」とする。「宇佐大鏡」に宇佐宮領の散在常見名田として規矩郡内の長野庄(現北九州市小倉南区)がみえ、その四至は「東限多原野、南限山、西限牟礼浦、北限大道」とある。


長野郷
ながのごう

「和名抄」諸本とも文字の異同はないが、伊勢本・東急本では大野おおの・長野の順で配列される。伊勢本・東急本・元和古活字本の訓「奈加乃」から「ながの」と読む。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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