デジタル大辞泉
「洒落」の意味・読み・例文・類語
しゃれ【×洒▽落】
《動詞「しゃれる」の連用形から。「洒落」は当て字》
1 その場に興を添えるために言う、気のきいた文句。ある文句をもじったり、同音や似た音の言葉に掛けて言ったりする。地口・警句の類。「洒落を飛ばす」「洒落が通じる」「駄洒落」
2 戯れにすること。冗談事。「こんないたずらは洒落にならない」
3 (多く「お洒落」の形で用いる)気のきいた身なりをすること。華やかに装うこと。「お洒落をして出かける」「洒落者」→おしゃれ
4 今風で、あかぬけていること。
「風雅でもなく、―でなく」〈浄・忠臣蔵〉
[類語]軽口・冗談・ジョーク・駄洒落・諧謔
しゃら【×洒▽落】
[名・形動ナリ]
1 物事にこだわらず、さっぱりしているさま。しゃれているさま。いき。
「傾城といへるものは…―なる風情をおもてにし」〈仮・可笑記・三〉
2 しゃらくさいさま。生意気。
「―な丁稚上がりめ」〈浄・曽根崎〉
3 遊女。近世、越前でいう。
「此所に名高き―には」〈浮・三代男・三〉
しゃ‐らく【×洒落/×灑落】
[名・形動]物事にこだわらず、さっぱりしていること。また、そのさま。洒々落々。「―な人柄」
「―でありながら神経質に生れ付いた彼の気合を」〈漱石・明暗〉
[類語]淡淡・洒洒落落
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しゃれ【洒落】
- 〘 名詞 〙 ( 「洒落」は当て字 )
- ① 当世風でいきなこと。気のきいていること。さっぱりしてものにこだわらないこと。洒脱(しゃだつ)。
- [初出の実例]「東坡が風情、杜子がしゃれ、山谷が気色より初て」(出典:俳諧・田舎の句合(1680)序)
- 「物堅ひを古風といやしめ、今やうの晒落(シャレ)をしらぬかと」(出典:談義本・当風辻談義(1753)一)
- ② はなやかによそおうこと。また、はでな服装。いきな身なり。おしゃれ。
- [初出の実例]「しゃれを尽し、一向(ひたすら)遊女の立振舞に似たれば」(出典:俳諧・本朝文選(1706)三・譜類・百花譜〈許六〉)
- ③ その場に興を添えるために言う滑稽な文句。ある文句をもじって言う地口(じぐち)。だじゃれ。警句。冗談。
- [初出の実例]「こっちへ木のめ田楽木のめ田楽と、しゃれをいふ」(出典:洒落本・遊子方言(1770))
- 「此の一巻や、しなのの俳諧寺一茶なるものの草稿にして、風調洒々落々と杜をなす。こや寸毫も洒落にあらず」(出典:俳諧・おらが春(1819))
- ④ たわむれてする事。冗談事。遊び。
- [初出の実例]「近所まで来たから、ちょっと寄りやした。あっちへ知らせずに、ここぎりのしゃれとしやせう」(出典:滑稽本・人間万事虚誕計‐前(1813))
- 「この密告が洒落(シャレ)でも冗談でもないことは」(出典:魔都(1937‐38)〈久生十蘭〉二二)
- ⑤ 遊里などでの遊び。また、それになれていること。
- [初出の実例]「江戸へズイ行(ゆ)きの北国(ほくこく)洒落(ジャレ)がよう御座えやせう」(出典:黄表紙・四天王大通仕立(1782))
- ⑥ 「しゃれおんな(洒落女)」の略。
- [初出の実例]「是正真の悪晒(わるしゃれ)といふしゃれにて、歴々人の持て遊びに成物にあらず」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)三)
- ⑦ (得意になれるような)見ばえのよい物事。
- [初出の実例]「親から仕送りなどといふ洒落(シャレ)はないから」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
洒落の語誌
( 1 )語源は、「ざれ(戯)」「され(晒・曝)」などに求められるが、この両語がどのような過程で後世の「しゃれ」に派生していったかは明らかではない。
( 2 )「洒落」の漢字を当てるようになったのは、室町時代以降「され」が「しゃれ」に拗音化してからのことで、江戸時代の儒学者、藤原惺窩によるといわれる。漢語としての「洒落(しゃらく)」は、心がさっぱりしていて、わだかまりがないことという意味で、「しゃれ」と類似した語義を有するところから当てられるようになったものか。
しゃら【洒落】
- [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
- ① しゃれたさま。しゃらく。いき。
- [初出の実例]「薄化粧に花車(きゃしゃ)めかして、しゃらなる風情をおもてにし」(出典:仮名草子・可笑記(1642)三)
- ② しゃらくさいさま。生意気。出すぎ。
- [初出の実例]「かく歌の事申出し。しゃらや、けちやうや、推参や。似合はぬ事にてましませども」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)下)
- 「ヤアしゃらな丁稚上りめ」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
- [ 2 ] 〘 名詞 〙 遊女の異称。しゃらこう。
- [初出の実例]「此所に名高きしゃらには、〈略〉万作などと、指折て語るを聞けば」(出典:浮世草子・好色三代男(1686)三)
しゃ‐らく【洒落】
- 〘 名詞 〙 ( 形動ナリ・タリ )
- ① 物事に深く執着しないで、気質やふるまいがさっぱりしていること。わだかまりがなく、あっさりしていること。また、そのさま。しゃら。
- [初出の実例]「三四の句、まことに、等閑もなき、洒落なる体也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)中)
- 「洒落(シャラク)に杉田の遠路を好むもあれば」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)初)
- ② =しゃれ(洒落)〔音訓新聞字引(1876)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「洒落」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
洒落
しゃれ
一般的には、気のきいたようすや服装、身なりをいうが、文学上では、広義に、「笑いの文学」に一貫する頓知(とんち)、滑稽(こっけい)、風刺などの文学精神、とくに江戸中期以降の江戸で栄えた粋(すい)や通(つう)という生活美学と密着したそれをいう。狭義には、言語表現の技術において、一語が音通などによって二義を表す懸詞(かけことば)、秀句、地口(じぐち)などと同性質のもの、および思考上の洒落ともいうべき詭弁(きべん)、曲解、皮肉などをいうが、これらが通意識の実践と密接に関係していたことは注目すべきであろう。
洒落の特徴は人工的なものである点にあり、知性や洗練さを要求されるとともに、そのよき理解者たる相手を必要とする。ひとりよがりの洒落では、洒落にならないのである。こうした洒落がもっとも盛行したのはいわゆる天明(てんめい)期(18世紀後半)で、この時代には、その名を冠した洒落本を初め、滑稽本、黄表紙(きびょうし)、噺本(はなしぼん)、狂歌、狂詩、狂文、雑俳(ざっぱい)、川柳(せんりゅう)などの笑いを生命とする文学、すなわち戯作(げさく)が栄えた。しかし洒落が、修辞的に縁語や畳語、枕詞(まくらことば)などと類縁関係にあることを考えると、これらの要素を多分にもつ『竹取物語』などの古小説や連歌(れんが)、俳諧(はいかい)などにも、洒落の精神は内在していたものといってよいだろう。
[宇田敏彦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
洒落 (しゃれ)
〈しゃれ〉のもつ意味内容については,時代によって若干の違いが生じていることもあって定説がないが,滑稽性,物事にこだわらぬ自由な精神,極度に洗練された感性のそれぞれを重視する三つの立場にほぼ分けられよう。近世初期においては,滑稽性よりも精神性に重点がおかれ,遊興理念を表現する言葉として用いられるのが一般であったが,中期以降はしだいに滑稽性および感性の洗練度を示すものにその中心が移り,文芸面においては特に言語遊戯に関する機知,滑稽を表す言葉となった。洒落本の本質もこの滑稽性に求められるべきで,〈滑稽本〉と書いて〈しゃれ本〉と読ませる用例の存在は,その一つの証左と考えられる。
→いき →通(つう)
執筆者:中野 三敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の洒落の言及
【言語遊戯】より
…〈humanité〉(人間性)と〈animalité〉(獣性)を合成した〈humanimalité〉(獣人性)というフランス製のカバン語もある。(11)地口 〈秀句〉〈口合(くちあい)〉〈[洒落](しやれ)〉ともいい,〈言いかけ〉〈掠(かす)り〉〈捩(もじ)り〉なども同様の技巧をさす。英語のパンpunにあたる。…
※「洒落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」