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開発独裁 かいはつどくさい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

開発独裁
かいはつどくさい

発展途上国における権威主義的な開発政策と強権政治からなる体制をいう。具体的には 1970年代からラテンアメリカやアジアに現れた新しい形の独裁政権のこと。この体制のもとでは,国内における貧富の格差が広がり,国民の生活が著しく犠牲になる結果をもたらそうとも,工業化,外国資本の導入が積極的にはかられ,経済的発展がすべてに優先する経済政策がとられる。これを正当化するために政治的自由は著しく制限される。それによって労働運動などは軍事力によって抑圧され,多くの人権問題が引起された。インドネシアのスハルト体制やフィリピンのマルコス体制などがその典型であるが,80年代中頃から開発独裁政権に対する反対運動が活発化し,マルコス政権は 86年2月打倒された。

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デジタル大辞泉の解説

かいはつ‐どくさい【開発独裁】

経済発展の途上にある国の政府が、国民の民主的な政治参加を抑制しつつ、急速な発展と近代化を目指す体制。福祉や自由の尊重などの政策は後回しにして、工業・資源開発・土木・軍事部門に経済資源を優先的に配分し、国力底上げを図ろうとする。第二次大戦後の韓国フィリピンインドネシアなどに見られたが、政権内の腐敗を招くことが多かった。広義には第二次大戦前のドイツや日本の体制、ソ連など共産主義国家の体制をも含む。

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大辞林 第三版の解説

かいはつどくさい【開発独裁】

発展途上国で、急速な近代化を達成するため官僚・軍部と結びついた少数指導者による強権的な政治支配体制。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

開発独裁
かいはつどくさい

経済発展のスタートには政治的独裁が必要であるとする政治スタイル。近代国家が国民経済を育成しようとすれば、そのための社会的、経済的な基盤を整備しなければならない。その費用(原始的蓄積、または本源的蓄積)は国内の農民や労働者といった大衆から搾取するか、あるいは植民地から収奪することによって捻出(ねんしゅつ)してきた。これが、欧米先進国や日本の経済発展の道であった。しかし、第二次世界大戦後に独立したアジア、アフリカ諸国は、西欧諸国のように植民地をもつことはできない。その反面で、労働者の権利など人権の尊重が世界的な規範として受け入れられるようになっている。
 1960年代後半から、韓国の朴正煕(ぼくせいき/パクチョンヒ)政権(1961~79)、インドネシアのスハルト政権(1965~98)、イランのパフラビー朝(パーレビ朝)などは政府指導型の近代化に乗り出すことになった。それは国民の政治的な要求を抑圧しながら、外資導入や輸出主導によって国民経済を形成しようとするものであり、政治の主体は独裁者とその政党にあった。政策形成の主体は、欧米諸国への留学経験のある官僚エリートなどであり、特務機関、特殊警察、軍治安部などが赤裸々な暴力をもって大衆を抑圧した。イデオロギーとしては、韓国の「勝共統一」(北朝鮮の共産主義に打ち勝っての統一)や、インドネシア建国の五原則であるパンチャ・シラ(神への信仰・人道主義・人民主権・民族主義・社会的公正)などの情緒的で解釈の幅が広く、国民の団結を促すものが使用された。
 開発独裁体制においては国民は政治の主体として否定されてきた。しかし政府から国民へ、間欠的に農地改革、賃金引上げなどの働きかけも行われていた。ところが、経済が発展してくればかならずそこには中間階層の成長が伴う。彼らはこれまでの抑圧政権に対して、労働条件の向上、言論・出版・集会の自由、腐敗政権打倒などの民主化要求を掲げるようになる。国民一般にも民主化運動が広がるが、政府はこれを大規模に弾圧する(1980年の光州事件など)。その結果は、民主化運動がいっそう盛り上がることとなる。92年の韓国における金泳三(きんえいさん/キムヨンサム)政権の誕生や、98年インドネシアでのスハルト失脚などの例にみられるように、最後に抑圧政権が崩壊するとき、民主政権が登場する。しかし、1979年のイラン革命(イスラム革命)のように、民衆的ではあっても復古的な政権が登場することもある。[初瀬龍平]

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世界大百科事典内の開発独裁の言及

【体制】より

…他方,こうした要件をあまり満たしていない政治体制が非民主主義体制であり,その代表的な類型として全体主義体制や権威主義体制が着目される。この下位類型として,伝統主義的な専制や寡頭制とは明瞭に異なった開発独裁がある。ラテン・アメリカやアジア・アフリカなどの,世界システムにおける準周辺的な地域によく見いだされる体制である。…

※「開発独裁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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