防衛装備庁(読み)ボウエイソウビチョウ(英語表記)Acquisition, Technology & Logistics Agency

デジタル大辞泉 「防衛装備庁」の意味・読み・例文・類語

ぼうえいそうび‐ちょう〔バウヱイサウビチヤウ〕【防衛装備庁】

自衛隊が使用する防衛装備品の開発・生産基盤の強化を図りつつ、研究開発・調達・補給および管理の適正かつ効率的な遂行と国際協力の推進を図ることを任務とする行政機関防衛省外局として平成27年(2015)10月発足。

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共同通信ニュース用語解説 「防衛装備庁」の解説

防衛装備庁

防衛装備品の開発や調達、廃棄、輸出を一元的に管理する防衛省の外局で、2015年10月に発足した。5兆円近い防衛予算の約4割を扱う国内最大の調達機関。武器禁輸政策を見直し新たに定めた防衛装備移転三原則に基づき、装備品の共同開発や輸出拡大の司令塔役を担う。業者との癒着といった不正を防ぐため、庁内に約20人からなる「監察監査・評価官」を設置し、省全体を見る防衛監察本部と二重チェック体制とするなど監察部門を強化した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「防衛装備庁」の意味・わかりやすい解説

防衛装備庁
ぼうえいそうびちょう
Acquisition, Technology & Logistics Agency

防衛省の外局で、2015年(平成27)10月、防衛省設置法を改正して設置された。日本政府における庁レベルの行政機関の一つ。略称ATLA。車両、艦船、航空機などの「装備品等について、その開発及び生産のための基盤の強化を図りつつ、研究開発、調達、補給及び管理の適正かつ効率的な遂行並びに国際協力の推進を図ることを任務」(防衛省設置法36条)としている。防衛装備庁の職員は、事務官、航空機・ミサイル・船舶・電波といった専門技術をもつ技官、陸海空自衛隊より配属された自衛官によって構成されており、職員総数は約1800人、事務官と技官が約1400人を占め、自衛官は約400人である。

 防衛装備庁は、それまで防衛省内部部局、陸海空幕僚監部、装備施設本部に分散していた装備品や物品の取得(航空機・艦船・車両などの装備品、食糧、燃料などの物品、コンピュータの保守点検などのサービスについて、一般競争入札などによって業者等を選定する一連の行政手続)に関する機能と、装備品の研究開発を担当する技術研究本部の機能を集約・統合し再編成する形で創設された。厳しい財政事情のもとで効率よく防衛力の整備を進めるため、防衛装備品の構想段階から、研究開発、生産・取得、運用、維持・整備、廃棄といった一連の過程を一元的に管理する「プロジェクト管理」によって、ライフサイクルコストを削減することを重要な目標としている。また、北朝鮮による核兵器、弾道ミサイル開発、中国による東シナ海南シナ海における軍事活動の活発化など、厳しさを増す安全保障環境のなか、軍事技術における優位を確保し優れた装備品の開発を続けていくことも重視されている。近年、戦闘機などのハイテク兵器の開発費が高騰し、数千億円から1兆円を超える開発費が見込まれるなか、こうした装備品は国際共同開発が主流となってきている。2014年4月、日本政府は、新たに「防衛装備移転三原則」を閣議決定し、海外への軍事技術の移転と国際共同開発を原則容認とした。軍事技術における優位を確保し、開発・生産コストを削減するためにも、これからの防衛装備庁における主要な装備品の研究開発では、海外との技術交流と国際共同開発が増えていくものと思われる。防衛装備庁に装備品や物品の取得機能が集約されたことに懸念を示す声もある。防衛庁・防衛省時代を通じて、取得にかかわる職員による収賄、背任、横領官製談合などが相次いで起きた。2007年には、元事務次官による長期にわたる収賄事件も発覚した。防衛省に設置され、防衛省・自衛隊全体を対象とした防衛監察本部に加えて、防衛装備庁は、内部に監察監査・評価官を新設しチェック機能を強化している。

 防衛装備庁は、防衛大臣の指揮監督を受ける防衛装備庁長官を長とし、技官の頂点にたつ防衛技監、長官官房審議官、総合装備・陸上・海上・航空をそれぞれ担当する4名の装備官が長官を補佐する。長官は、いわゆる「背広組」の防衛官僚が配置される。内部部局としては、長官官房、装備政策の企画立案を行う装備政策部、「プロジェクト管理」を担当するプロジェクト管理部、研究開発に関する企画立案を行う技術戦略部、装備品調達の制度や政策の企画立案を行う調達管理部、実際の装備品・物品などの調達実務を行う調達事業部がおかれている。実際の研究開発は、航空装備研究所、陸上装備研究所、艦艇装備研究所、電子装備研究所、先端技術推進センターで行われており、千歳(ちとせ)(北海道)、下北(青森県)、岐阜(岐阜県)に試験場を有する。

[山本一寛 2019年9月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「防衛装備庁」の意味・わかりやすい解説

防衛装備庁
ぼうえいそうびちょう

防衛装備品の一貫管理や,諸外国との共同開発,輸出の窓口などを担う行政機関。2015年10月改正防衛省設置法が施行され,防衛省外局として設置された。かつて陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊の各幕僚監部(→統合幕僚監部)の装備関連部門,技術開発本部などに分散していた業務を一元化し,防衛装備品の構想,開発,生産,維持整備,廃棄までを一貫して管理することで,高品質な防衛装備品の効率的な調達やコスト管理の強化を目指す。また,近年の国際的な潮流とされる諸外国との防衛装備品の共同開発・生産などへの参画を企図する。体制は,防衛装備庁長官のもと,装備政策部,プロジェクト管理部,技術戦略部,調達管理部,調達事業部などが置かれるほか,汚職の防止,透明性の確保のため監察・監査評価官を長とする内部監査を担う部署ももつ。発足時の職員数は約 1800。2014年4月に安倍晋三内閣が閣議決定(→閣議)した防衛装備移転三原則(→武器輸出三原則)により,防衛装備庁が管掌する業務を実施する素地がつくられた。防衛装備品の輸出と諸外国との共同開発の推進により,政府は防衛力の強化のほか国内産業への経済波及効果を見込む。

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知恵蔵 「防衛装備庁」の解説

防衛装備庁

2015年10月、防衛省の外局として新しく設置された庁。これまで3機関(陸・海・空自衛隊)に分散されていた武器装備品の研究開発、調達、補給及び管理を一元管理することで、防衛力の強化やコスト削減などの効率化を目指す。職員は約1800人(うち約400人が自衛官)。「装備政策部」「プロジェクト管理部」「技術戦略部」「調達管理部」「調達事業部」の5部門が設けられている。初代長官には、防衛省技術研究本部長・渡辺秀明が就任した。安倍晋三内閣は14年4月、武器輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」を見直し、各種制限を取り払った原則解禁の「防衛装備移転三原則」を閣議決定している。これに基づき、政府は海外への武器・防衛技術の輸出拡大、欧米軍事企業との共同研究・生産の拡大等を見込んでおり、同庁新設に伴う国内産業への経済波及効果も期待している様子。防衛装備庁の予算規模は約1兆6千億円(関連調達分を含めると約2兆円)で、防衛予算全体の3分の1以上を占める。
経済・産業界からは歓迎の声が多いが、歯止めのない武器製造・輸出の拡大による「軍産複合体」の形成を心配する声もある。また、旧防衛庁時代の07年には、事務次官の汚職事件が起こっており、製造業者との癒着や不正、天下りなども懸念されている。20人規模からなる監察・監査評価官の組織が新設されたが、権限が集中する同庁だけに、厳格な監視・チェック体制と徹底した透明性の確保が課題となる。

(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)

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