幕末・維新期に活躍した有力な藩。語句の意味は、勢力の雄大な藩である。しかし、歴史的な概念としては、幕藩体制下の封建的矛盾の拡大の進行のなかで、一方ではその割拠の旗頭となりつつ、他方ではその基礎を解体する方向に進み、新しい統一国家へのてこの役割を果たした藩をいう。しかも、その藩は、藩としての指導理念をもっていた。具体的には、越前(えちぜん)(福井)、水戸、薩摩(さつま)、肥前(佐賀)、尾張(おわり)、因州(鳥取)、宇和島、土佐、長州(萩(はぎ))などがあげられるが、とりわけ薩長土肥は明治維新を推進した藩として「西南雄藩」とよばれる。
これら雄藩の台頭は、天保(てんぽう)の改革ないし安政(あんせい)の改革における成功を背景としているが、それだけにこれらの藩内の政争は激しいものがあり、その激しさのなかで人材が登用され、内政・外交の厳しい政治情勢のなかで、新しい統一国家への理念が鍛えられていった。そして、幕末期の尊王攘夷(そんのうじょうい)運動、公武合体運動、あるいは倒幕運動や公議政体論などの政治運動や政治理念の展開する過程で、これらの雄藩は、あるときは徳川幕府の側につき、あるときはそれへの対決の姿勢を強めていった。なかでも西南雄藩が、幕末政局をリードして倒幕運動を進め、維新政府実現の中心勢力となったので、創出された近代天皇制国家において、これらの雄藩は藩閥を生み出し、天皇制権力の中枢を握る存在となった。
[田中 彰]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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